本研究の目的は、対象児を入所時と退所時にMRIで評価し(多様な行動・心理尺度評価と組み合わせる)、深刻な被虐待経験を有する非行少年の神経学的リカバ リーメカニズムを解明することであり、矯正教育効果を検証することである。研究対象施設である神戸市立若葉学園は児童自立支援施設であり、夫婦小舎制を採 用している。夫婦小舎制とは深刻に非行化した少年らを疑似家族的環境で再教育することにより、非行性の除去や様々な対人関係スキルを構築させることを目指 している。 本年度はこの児童自立支援施設の構造化について研究を進めた。対応の難しい子ども達に適切な教育を提供するためには、教育環境の構造化をどのように進め るかが重要である。構造化は2つの軸で説明できる。1つは「厳守すべきルールの透明度」で、もう一つは「やるべきことの明瞭度」夫婦小舎制では、教育環境の 構造化のカギを握るのは夫婦である寮長と寮母である。交替制の施設と比較すると、夫婦小舎制では、入所対象児に対してこの2つの軸の到達度や達成度を明瞭 に示すことが容易かつ簡便であることが示唆された。この成果は決定的に重要であると思われた。なぜなら、構造化の水準を高く設定することこそが教育効果を 高めることにつながることである。今後はこのモデルが本施設のみならず、他の児童自立支援施設、そして他の教育環境(少年院や学校教育)でも応用可能かを検証する必要がある。 調査では協力施設である神戸市立若葉学園の協力を得て、順調に対象者に研究協力を依頼し、心理検査等実施している。
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