• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

前頭葉血流分離度測定を用いた自閉症スペクトラム児者の評価と訓練プログラム開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K04842
研究機関文教大学

研究代表者

成田 奈緒子  文教大学, 教育学部, 教授 (40306189)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード自閉症スペクトラム / 前頭葉 / スイッチングタスク / 分離度 / NIRS
研究実績の概要

本研究では、これまで申請者らが研究、開発を進めてきたスイッチングタスクに呼応した前頭葉酸素化ヘモグロビン濃度変化における分離度の左右差による自閉症周防ペクトラム(ASD)の補助診断システムとそれを用いた訓練システムの開発を目指している。
今年度は、これまで用いていた近赤外線酸素モニター装置と課題提示ソフトを一新し、より手軽で正確に測定できるよう改変して、それを用いた新たな定型発達(TD)被験者とASD被験者における再検討を行った。被験者は、自分の意思で実験に参加したTD者13名(21~61歳,男性5名,女性8名:平均年齢25歳)とASD者7名(14~54歳,男性4名,女性3名:平均年齢28.6歳)である。ASD者はいずれも専門医により診療機関において診断を受けており、WISC-ⅢまたはWAIS-ⅢにてIQ65以上である。すべての被験者には事前に実験の趣旨を説明し、文章による承諾を得た上で実験を行った。実験の方法は申請者らの既報( Journal of Pediatric Neurology(2012) 10:1-8.)に基づいて行った。測定された酸素化ヘモグロビン濃度変化よりTD群とASD群の重み付分離度を算定し平均した結果、前頭葉右側ではTDが0.74、ASD群が0.50とTD群が高い値を示した(有意差なし)。一方左側では、TD群が0.78、ASD群が0.20となり、t検定による有意差(P<0.05)を検出した。これは、これまで用いたシステムを用いて申請者らが集積した結果と相違ない結果であり、このことから、重み付分離度を用いたスイッチングタスク施行中の酸素化ヘモグロビン濃度変化の解析は、ASD者をTD者から抽出する際の客観的補助診断法としての有用性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究においては、既存の方法に頼らない、新規で独自のASD診断補助方法が用いられることが必須の課題となっている。申請書に記載したとおり、まずはこの補助診断法の確実性を問うことが今後の研究の信頼性を担うため、本年度は新規の装置、新規のソフトウエアを用いても、この診断法が成り立つかどうかを検証することがもっとも重要なタスクであった。当初はTDのみでの実験を計画していたが、ASD被験者からの協力の申し出が得られたため、少数ではあるがASD者でも実験が行えたことは大きな進展であった。これら少数の被験者とはいえ、左側での有意なTD-ASD間での重み付分離度値の差を認めたことの意義は大きく、今後もちろん例数は増やすものの、ここまで成果が得られたことは大きな進展と言える。

今後の研究の推進方策

現在までに、重み付分離度を用いてスイッチングタスクを行う際の前頭葉酸素化ヘモグロビン濃度を測定することは、ASD者の補助診断ツールになりうることが示唆された、今後は、これをさらに確実にするために、症例数を増やすことと、解析の精密性をさらに上げることを目的として、同様の実験を継続する予定である、
また、左右側の前頭葉の機能的差異については多くの研究がなされている。今回の結果では、1)TD者において左側の分離度が高い 2)ASD者において特に左側の分離度がTD者に比較して有意に低い、という2点が特徴的である。既報の結果を合わせ考えると、特に左側での分離度が低い個体では相対的に右側優位になるため、高次脳機能を要するタスク終了直後の情動認識はネガティブに傾くことが予想され、基礎値としての不安も高い可能性がある。これらを実測し解明することが、ASD児者における、社会生活場面等における情動逸脱のメカニズムの理解と適切な支援につながる可能性が高い。そこで今後は、特にASD者での前頭葉機能の左右差と情動反応・行動の関連を解明するための実験を行う予定である。特に、左側分離度が低い個体に対して、前頭葉機能不全に関連して観察されると報告のある、特性不安とタスク終了直後の状態不安、そして絵画統覚検査での解析を用いて、左側分離度との相関を検証して、不安と左側前頭葉の関連につき、より詳細に検討したい。さらに、それらの基礎データをもとにしたASD者に対する、適切な前頭葉-情動-視床下部機能制御訓練プログラムの開発を作成し、参加希望が得られた被験者に対して、長期的なアプローチを行っていきたいと考える。そして、これら累積した成果をASD者に対する、適切な前頭葉-情動-視床下部機能制御訓練プログラムとして臨床的に還元できるよう、開発を試みる。

次年度使用額が生じた理由

順当に予算執行を行ったが、物品の価格改訂等により1000円未満の未執行額が残存したため、来年度に繰り越し使用したいと考える。

次年度使用額の使用計画

来年度予算に繰り入れ、消耗品購入等で仕様する予定である。、

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Proposal of Auxiliary Diagnosis Index for Autism Spectrum Disorder Using Near-Infrared Spectroscopy.2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Yanagisawa, Nozomi Nakamura, Hitoshi Tsunashima, NaokoNarita.
    • 雑誌名

      Neurophotonics.

      巻: 3 ページ: 031413

    • DOI

      10.1117/1.NPh.3.3.031413.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 遺伝と乳幼児突然死症候群2016

    • 著者名/発表者名
      成田正明、江藤みちる、大河原剛、成田奈緒子
    • 雑誌名

      小児科臨床

      巻: 70 ページ: 159-166

  • [雑誌論文] 朝お腹がすく脳」をつくるために覚えておきたい10の心得2016

    • 著者名/発表者名
      成田奈緒子
    • 雑誌名

      食べもの文化

      巻: 498 ページ: 12-29

  • [雑誌論文] 子どもの育ちの根底にある大切なものって?~脳科学からみた子育て~2016

    • 著者名/発表者名
      成田奈緒子
    • 雑誌名

      児やらい

      巻: 13 ページ: 123-135

  • [学会発表] 生き辛さを緩和するためにホーム職員ができること~医師の立場から~2016

    • 著者名/発表者名
      成田奈緒子
    • 学会等名
      第23回全国自立援助ホーム協議会茨城大会シンポジウム
    • 発表場所
      つくば市
    • 年月日
      2016-10-20 – 2016-10-21
    • 招待講演
  • [学会発表] 豆つかみゲーム施行時の前頭前野機能測定と認知機能訓練への応用の可能性2016

    • 著者名/発表者名
      山内美帆、苅田千里、関川香穂、長谷川涼、成田奈緒子
    • 学会等名
      第38回日本生物学的精神医学会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      2016-09-08 – 2016-09-10
  • [図書] 8歳までの脳にやっていいこと・悪いこと2016

    • 著者名/発表者名
      成田奈緒子
    • 総ページ数
      198
    • 出版者
      PHP研究所
  • [図書] 7歳までに決まる!かしこい脳をつくる成長レシピ2016

    • 著者名/発表者名
      小山浩子(著)・成田奈緒子(監修)
    • 総ページ数
      95
    • 出版者
      PHP研究所

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi