本研究では、これまで申請者らが研究、開発を進めてきたスイッチングタスクに呼応した前頭葉酸素化ヘモグロビン濃度変化における分離度の左右差による自閉症スペクトラム(ASD)の補助診断システムとそれを用いた訓練システムの開発を目指している。 最終年度までにConners質問紙やPARS発達質問紙を用いた詳細な被験者の再分類を行った上で、実験参加者は定型発達14名,ASD3名,ADHD2名,併発7名であった。計測装置はHb131 (株式会社アステム)を用いて測定部位は前頭前野背外側部 左右4ch (サンプリング2Hz)で行い、分析は左外側部1chのデータをもとに行った。すべての被験者には事前に実験の趣旨を説明し、文章による承諾を得た上で実験を行った。実験の方法は申請者らの既報( Journal of Pediatric Neurology(2012) 10:1-8.)に基づいて行ったが、前年度までの結果を踏まえ、実験方法を①補助者が課題用タブレットを実験参加者の前で持つ②ヘッドレストを取り付ける③NIRS装置を帽子型からバンド型にする の3点で改善した。しかしながら、全被験者での結果としては、WS(重み付分離度)が定型発達群(n=14)で1.34+/-2.11、発達障害群(n=12)で0.46+/-0.53とこれまでの結果と同様、発達障害群で低値であったが有意差は認めなかった。一方他の指標である変曲点は16.8+/-2.3 v.s. 16.3+/- 2.6、ローレンツプロットは1.02605E-05+/-1.03481E-05 v.s. 1.29926E-05+/-8.25336E-06であり、両群の明確な差異は認められなかった。
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