研究課題/領域番号 |
16K04850
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研究機関 | 名古屋芸術大学 |
研究代表者 |
中嶋 理香 名古屋芸術大学, 人間発達学部, 教授 (50461116)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 児童発達支援事業所 / 食べる機能の発達 / 専門家支援 / アンケート調査 |
研究実績の概要 |
2019年度は,児童発達支援(通所型)事業所で働く保育士を対象に在籍児に対して,専門家による食べる機能の発達支援の必要だと感じる度合いを調査した.調査領域は,食形態,姿勢,食具,食べ方,マナーの6領域である.各領域ごとに6段階評価した.得られた資料を機能訓練士のかかわりの有無,自園調理給食園と業者委託給食園に分けて検討した.調査対象事業所は10か所,対象児132人の平均月齢51.48ヵ月である.対象児のうち発達障害が106人(80.3%)であった.機能訓練士が常勤職の施設は2施設,非常勤の施設は6施設,機能訓練士がいない施設は2施設である.機能訓練士による食べる機能の直接訓練を実施している施設は5施設である.自園調理園は3施設,業者委託給食園は5施設,残る2施設は,弁当持参する施設である. 結果,姿勢,食具,マナー,偏食領域は,食形態,食べ方領域に比べて,専門家による食べる機能の発達支援を必要だと感じている領域であった.また,機能訓練士による直接的な訓練を直接的な訓練を実施していない施設に比べて,実施している施設において,専門家による支援の必要性を強く感じる領域は,6領域のうち,食形態,食べ方,食具であった.これに対して,偏食については支援の必要性を感じる度合いが低かった.業者委託給食園と自園調理給食園では,評価の差はなかった. 考察 専門的な支援を必要と感じる領域は姿勢,食具,マナー,偏食の4領域で,食形態,食べ方といった口腔機能に関する領域ではなかった.この結果は,口腔機能評価の難しさがあると考えられた.偏食についての捉え方は機能訓練士の有無で異なった.この結果は心理社会的な問題や感覚特性として偏食を理解する視点を持ったためと考えらた.業者給食と自園調理に差はなく,業者において障がい児に適した食知識を持ち,顔の見える関係である自園調理と同じ工夫がされていたと思われた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
障がいを持つ乳幼児の食べ方と発達を理解した指導・評価を目的とした研究課題であるが,現状把握にとどまっている.自治体の規模など地域行政の違いや施設の役割が地域によって異なることが要因として考えられる.食べる機能は,口腔運動,対人コミュニケーション,動作や姿勢保持,道具の操作といった身体活動が伴う包括的な能力である.したがって,評価と指導を行う環境として療育施設といった制約の多い環境よりも「家庭」に視点を移すことが必要であった.研究の遅延要因として,地域での各施設の役割が異なる多様性が調査資料結果に影響し,評価から支援がシステムとして定着することはかえって実情と乖離を生むことに気が付かされた.今後,家庭を支援する視点をもって取り組む必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
家庭の食環境について調査研究する必要がある.これまで家庭を調査した研究では,「子どもの食についてのなやみ」研究が主であった.例えば,偏食,小食,よくかまないなど親の視点からの調査である.これらの研究の視点は,「養育者の子に対する期待」に達していない子どもの姿を示しているに過ぎない.ここに欠けているのは,親がどのような年齢の子どもに対して,どのような食べる機能を要求しているかという養育者を対象とした意識である.食べる機能は,食べる行為そのものと食事場面を構成する人や物を含む環境,そして,その場で展開する人間関係まで広げた包括的な概念である.したがって,養育者が幼児の食事と口腔運動・姿勢保持・食具の使用に配慮しているかを理解する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
過去3年の研究成果は,研究計画時の予測できなかった要因が浮き彫りになり,その要因について考察する時間となった.この結果,研究の方向性を変更した.加えて本年度は,個人事由により十分に研究を進めることができなかった.このため補助事業期間延長を申請し,それが認められた.研究計画立案当初は,療育施設や教育機関を視野に入れていたが,研究の結果,自治体等の規模や地域での役割の違い,機能訓練士等の配置の有無から食の捉え方が異なることが明らかとなり,障がい児の食という重要なテーマへの取り組み方や療育現場の意識が障害種ごとに異なり,統一した意識をもって,現場で児の食べる機能を評価し,支援プログラムにすることが困難な状況であった. 次年度は,障がい児の食支援,教育の方向性を保ちながら,家庭における障害児・定型発達児を含む包括的な支援,ユニバーサルな視点を含めた取り組みを行う予定である.
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