本研究の目的は普通科高等学校において特別な支援を要する「医学的診断のない生徒」に対し,合理的配慮を行うための教員チームを組成するための方法について検討することである。本年度は4年計画の最終年であった。これまでの成果の一部は「教員のための学習支援指導ガイド(普通科高等学校向け)」として研究代表者のウェブサイトで公開している。このガイドの教育利用について全国から複数回問い合わせがあり、教員研修でも利用されたりしていることで、本研究プロジェクトの一定の成果が出ているものと考えられた。 本研究の当初の計画では次の2つの研究を行う予定であった。(A)教員を対象とした合理的配慮を提供するための組織づくりプロセスの検討、(B)生徒を対象とした困り感の解消に向けた認知機能アセスメントと支援技術による学習成績向上の検討。(A)については3年半を経て、調査対象校の支援教育に携わるチームがどのように変遷したのか、そのプロセスを質的に分析し、成果を報告できるようにまとめている。教員が入れ替わっても機能するためのチームの組成やITツールを用いた情報共有システムの導入による変化、実際に生徒を支援するうで生じた運用上の課題など、学会等で成果報告できるようにまとめている。(B)について、2018年度より生徒に関する支援効果の実証については課題が生じ、計画の修正を行った。少数ながらも面談及び支援前後での個人内の自尊心の変化について数量的に調査した。結果としては支援があれば自尊心が上がるというよりはむしろ、支援の結果として就職が決まったり、進級が決まったりした際に自尊心が上がる傾向が確認された。合理的配慮による学習状況の改善が直接自尊心を向上させるよりはむしろ、学習状況の改善による進路決定が自尊心と関係しているようである。
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