研究課題/領域番号 |
16K04854
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 誓子 神戸女子大学, 健康福祉学部, 准教授 (70360261)
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研究分担者 |
佐藤 勝昌 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (00142331)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 給食 / 嚥下調整食 / 特別支援学校 / 高齢者福祉施設 |
研究実績の概要 |
特別支援学校に通学している児童に対する給食提供の体制について検討している。成長期の嚥下調整食を検討するために,成人期の嚥下調整食を把握することを目的として高齢者福祉施設への聞き取り調査を行った。高齢者福祉施設では,対象者の摂食嚥下の状態に応じて嚥下調整食を提供している。基本食から嚥下調整食への再調理をしやすくするために,食品によっては普通食と異なる食品を用いている施設もあった。施設での食事は家庭での食事に近いもので提供することを目指しており,一般的に出回っている食品を選んでいた。この成果を,第27回体力・栄養・免疫学会(埼玉県)で発表した。 特別支援学校への聞き取り調査を行った。児童への嚥下調整食は,基本食と味に違いがないように工夫していた。例えば,基本食からペースト食への展開で水分を加える際には,基本食の調理で使用しただし汁を利用したり,とろみ剤を添加する場合には,味の変化に影響のない程度の量に留めたりしていた。栄養教諭は,担任教員や養護教諭,保護者との連携が重要と考えており,児童が摂取できる食形態を適切に調整していた。必要があれば,新年度開始時期には保護者に来学を促し,児童が食事を摂る様子を保護者と共に把握することに努めていた。栄養教諭は食生活・食行動の指導を行っていた。児童の障害の程度に応じて短期及び長期計画で目標を作成し,摂食嚥下の能力の向上に努めていた。特別支援学校における給食は,基本食を含めて4段階程度の食形態で提供されていた。給食の給与栄養量は,基本食に比べて嚥下調整食の栄養量の方が低く,その中でも刻み食よりもペースト食の方が低かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発達期にある嚥下調整食の給食体制について把握することができた。 研究計画のうち,施設での給食体制,食形態による調理方法の違いについては把握することができたと考えている。しかし,嚥下調整食の食形態は,在籍する児童の摂食・嚥下機能の段階によって異なるもので,特別支援学校を同じ傾向で検討することには無理があることが調査により明らかになっている。また,給与栄養量については施設から提供された資料を現在分析中であり,食形態の違いによって給与栄養量に差があるか否かについては次年度の課題である。 また,提供している給食体制のみならず,児童の摂食嚥下の能力に応じた指導計画も適切なものでなければならないことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
日本摂食嚥下リハビリテーション学会から「発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018」が公表された。この分類方法を参考資料として,特別支援学校における嚥下調整食の調理を行い,嚥下調整食の段階によって栄養量に差があるかを検討する予定である。 これまでの聞き取り調査によって,特別支援学校での嚥下調整食は基本献立食を展開して作成されていることが分かっている。その場合,給与栄養量は各校の栄養教諭の判断によって,基本献立食と同等であるかもしくは提供量を減少させているかのいずれかであった。いずれの学校においても独自の判断によっている。このことは,基本献立食では給与栄養目標量に対する充足を評価できるが,嚥下調整食ではその充足を評価できないことを意味している。 上述の嚥下調整食分類2018においても栄養量については触れられておらず,嚥下調整食を摂取する児童への給与栄養量は未だ不明である。次年度は,嚥下調整食分類2018に示された手法に従って調理した場合に,栄養量はどの程度になるのか,それは現在各校が実施している給食の給与栄養量と違いがあるのかについて明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 聞き取り調査の対象施設が近隣であったため,旅費が不要であった。 (使用計画) 嚥下調整食の献立作成と調理を行うため,必要な調理器具や参考図書の購入を予定している。また栄養計算ソフト,パソコン及びプリンターの購入を計画している。加えて,引き続き施設への調査も行うため旅費の使用を予定している。論文投稿の準備を進めている。
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