研究実績の概要 |
平成28年度は、ポリマー結合金ナノロッド-ジメチルアミノヒドロキシフラボン(DMHF)複合体を調製し、その電場吸収および小角X線散乱(SAXS)測定を行った。このとき、アスペクト比を2, 4, 6, 8と変え、ポリマー分子量を700~50000と変えた試料を用意した。これにより、ロッド-ジメチルアミノヒドロキシフラボン分子間距離を数nm~数十nmの範囲で調節できた。電場を印加するとプラズモン吸収強度の増減が観測された。光源に直線偏光を用いると、吸収強度の偏光角依存性から偏光異方性を求められる。この値は、ナノロッド試料が異方的に配列する場合に増大すると予想される。 一方、外部電場を印加してSAXS測定を行い、距離分布関数による解析から金ナノロッドがヘキサゴナル集合構造を形成することが分かった。以上により、プラズモン吸収の偏光異方性と合わせて電場配向のアスペクト比およびロッド-分子間距離依存性を議論しつつある。 同時に、電場蛍光スペクトルを観測する。このとき、電場セルを励起光に対して45°傾けて配置し、放出された蛍光を励起光に対して垂直に配置した分光器で検出する。DMHFは、波長380 nmの光で励起するとN*蛍光を520 nmに、T*蛍光を570 nmに放出する。ここで、励起波長380 nmはナノロッドの短軸方向に局在するプラズモン吸収波長530 nmよりも短波長であり、共鳴条件ではない。はじめにこの条件でN*/T*蛍光強度比からin situでの電場増強度、ならびに蛍光増強度をロッド-DMHF分子間距離を変えて求める。申請者の提案する系は、ロッド同士が数珠つなぎ状につながってプラズモン電場の協同効果が現れると期待される。したがって、蛍光増強度のロッド-DMHF分子間距離依存性を詳細に検討する予定である。
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