研究実績の概要 |
平成29年度は、引き続きポリマー結合金ナノロッド-ジメチルアミノヒドロキシフラボン(DMHF)複合体を調製し、その電場吸収および小角X線散乱(SAXS)測定を行った。このとき、アスペクト比を2, 4, 6と変え、ポリマー分子量を700~50000と変えた試料を用意した。これにより、ロッド-DMHF分子間距離を数nm~数十nmの範囲で調節できた。 電場を印加するとプラズモン吸収強度の増減が観測された。アスペクト比2, 4, 6のスペクトルを比較すると、アスペクト比が小さくなる、つまり短軸の長さが大きくなるほど小さな電場強度で短軸ピークの増大と長軸ピークの減少を確認し、電場OFF後の緩和時間が長くなることが分かった。さらに、試料への電場印加時間を長くするほど、電場OFF後の緩和時間が長くなることが分かった。このことから、ナノロッドに電場相互作用が長くはたらくことで電場を切っても一定方向に並び続けるのではないかと考えられた。 ここで、複合体の蛍光測定用に超薄型の循環型セルを新たに開発した。セルを閉じた形にできたため、1)揮発性のトルエン溶液試料でも長時間の電場測定が可能となった。加えて、ITO膜をガラス基板の端から少し控えて成膜したことにより、2)1500 Vの高電圧を印加してもショートのリスクを減らすことに成功した。また、フロー型であるので、3)長時間の測定でも試料へのダメージを抑えられる改良が期待でき、試料の回収も可能となった。最も大きな改善点は、4)電場強度の向上である。 このセルを用いて、電場蛍光スペクトルを観測することが可能になった。DMHFは、波長380 nmの光で励起するとN*蛍光を520 nmに、T*蛍光を570 nmに放出する。現在、N*/T*蛍光強度比からin situでの電場増強度、ならびに蛍光増強度をロッド-DMHF分子間距離を変えて求めている。
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