これまで、油水界面構造を持つ生体組織に関して、生物学的観点に基づいた研究が多数行われているが、物理的/化学的観点に基づいた研究はほとんど進展していない。その原因は、生物学的油水界面のモデル作製法が確立されておらず、界面を研究するための実験技術が非常に限られているためである。 そこで本研究では、始めにモデル界面を基板表面上に作製する手法を開発し、蛍光顕微鏡を用いて油水界面と長鎖リン脂質ベシクルとの反応を調べた。始めに、モデル界面に低濃度のベシクルを添加し、蛍光顕微鏡を用いて個々のベシクルの動きを観察した。その結果、吸着の初期段階では、ベシクルは油水界面に接触した後、数十ミリ秒の間界面に吸着しながら界面上を運動し、その後、大部分のベシクルは溶液側へと再び移動することが分かった。そして、残り少数のベシクルは崩壊し界面にモノマーとして界面に吸着した。さらに複数の顕微鏡測定から、吸着がさらに吸着が進み界面にリン脂質がすると、一様なリン脂質単分子膜が形成されることが分かった。 また、界面張力計を用いて、水―油界面に形成された短鎖リン脂質単分子膜の分子密度を計測した。短鎖リン脂質はベシクルではなくミセルを形成する。上記のベシクルを用いて得られた結果と比較すると、脂質ミセルは非常に速い時間スケールで油水界面と反応することが分かった。界面張力測定の結果、油の種類に依存して、脂質単分子膜の分子密度が変化することが分かった。
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