研究課題/領域番号 |
16K04872
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 憲治 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50360946)
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研究分担者 |
植村 哲也 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (20344476)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 非可換ゲージ場 / スピントロニクス / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
今年度はスピン軌道相互作用(SOI)を非可換ゲージ場と見なしたときに生じるSU(2)ゲージ場を導出した。SOIの場合、そのSU(2)ゲージ場は一般的にはピュアゲージと呼ばれるものであり、それは、そのField Strengthが存在しないものである。その際に非対角項を落とす近似をするものを断熱近似もしくはアーベリアン近似と呼称するのであるが、正しく検証してみると、断熱近似には2通りの取り方があり、どちらを取っても、それらから生じるField Strengthは同じ有限な値になる。 しかしながら、普通の断熱近似が対角項を残す近似である一方で、新しく発見されたものはそうではない。寧ろ、SU(2)ゲージ場の非可換項から生じるものであることを厳密に導いた。二つの近似は、同じ結果を導くが、物理系によっては新しく見つけた近似を取った方が計算が易しくなることがある。従って、従来の断熱近似という言葉は正しいが、アーベリアン近似という呼び名は不適切である。なぜならSU(2)ゲージ場の非可換項から出来る断熱近似もあることが判明したからである。 そして、この結果を一般のn次のRashba-SOIが存在する場合のAharonov-Casher(AC)効果による位相の導出に用いた。従来、1次Rashba-SOIと1次Dresselhaus-SOIが存在するときのAC効果による位相がどうなるかは知られていたが、高次のRashba-SOIが存在するときは不明で、そのため理論計算や実験がほとんどなかったのである。そこで初めてこれらの高次のRashba-SOIが存在する際のAC効果による位相を導出した。また簡単なAharonov-Bohm(AB)リングタイプのスピンフィルターで、高次Rashba-SOIが存在するときの磁場依存性を計算し、この理論の有用性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画方法で上げておいた、Rashba効果ならびにDresselhaus効果などの非可換ゲージ場のスピン伝導特性に及ぼす影響を明らかにする研究の一端として、スピン軌道相互作用(SOI)を非可換ゲージ場と見なし、その具体的な形を導出し、その結果、従来からある断熱近似に実は2種類あることを発見したこと。そして、そのことによって、高次Rashbaスピン軌道相互作用がある場合におけるAharonov-Casher効果による位相が今まで不明であったものを導出出来たことから、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規なデバイスであるスピン量子十字素子への応用も考慮しつつ、トポロジカル物質の研究に進む。中でもグラフェンナノリボンの量子スピンホール効果の再考やワイル半金属の伝導特性を考えていく。その際に点群対称性による任意次数の有効ハミルトニアンの構築を数学のinvariant theoryをツールとして行う。C_3v点群下で生じるDirac Coneのワーピングは、すでにFuが3次までの項を取り入れて説明したが、それでは不十分で、少なくとも5次の項は必須であることが我々の研究でわかっており、さらに無限次までの項がどう書けるかを一般的に表現出来ている。これを任意の点群に拡張していきたい。 また、Model Hamiltonianで電極を強磁性体にしたときに生じる異常ホール効果を利用した場合のスピンコンダクタンスの計算を行う。その際に不純物の影響による内因性と外因性のクロスオーバーが電流・電圧特性にどのように現れるかを計算する。また、背後にあるベリー位相の位相差が伝導特性にどのように現れるのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付内定日が10月だったので、4月から予定していた旅費や物品を買うことが出来ず、それらの一部しか、今年度中には使用及び購入できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年は海外発表の機会が多いので、それらに充てることと、当初、今年に購入予定であったワークステーションの仕様をアップグレードして購入する予定でいる。
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