研究課題/領域番号 |
16K04875
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石井 史之 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (20432122)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 熱電変換現象 / 熱電効果 / 異常ネルンスト効果 / 異常ホール効果 / 第一原理計算 / トポロジカル不変量 / ナノ物質 / 物質デザイン |
研究実績の概要 |
ナノサイズ化・低次元化によって熱電変換効率が向上することは以前から知られていたが、本研究では低次元化によって現象として顕著にあらわれる、量子異常効果を活用した熱電変換効率の向上をめざしている。今年度はシンプルな二次元モデル系において、ナノメートルサイズのSkyrmion結晶を想定し、水素原子を仮想的に並べた人工結晶の第一原理計算(スピン方向を束縛したノンコリニア密度汎関数法)をおこなった結果、強束縛模型によって既に報告されていた、量子異常ホール効果のバンド構造を再現した。また、電子状態を詳しく解析したところ、巨大なトポロジカル不変量(チャーン数)を示すバンドが、サイトの電子数が半分となるhalf-filled band近傍にあることが明らかになり、フェルミ準位をRigid-band近似で変化させたところ、巨大な異常ネルンスト効果を示しうることが明らかとなった。また、Skyrmion結晶のサイズを大きくすると、その大きさに比例して、異常ネルンスト効果が増大する可能性が明らかになった。これらの成果は論文:Y. P. Mizuta and F. Ishii, Large Anomalous Nernst Effect in a Skyrmion Crystal, Scientific Reports, 6, 28076(2016)としてまとめられ、プレスリリースをおこない、地方紙朝刊にも掲載された。また、より現実的な系を想定し、異常ホール効果が観測されており、Skyrmion結晶の可能性がある、EuOについて超薄膜を仮定した小さなSkyrmion結晶モデルについて、電子状態計算をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Skyrmion系の巨大ネルンスト効果の可能性を理論的に明らかにした。特に、Skyrmionサイズを大きくすることによって異常ネルンスト係数が増大することは、今後の現実系における高い熱電変換効率を示すSkyrmion制御の研究へと繋がる。
|
今後の研究の推進方策 |
実験的にSkyrmion結晶相が報告されている系について第一原理計算をおこない、Skyrmion結晶の安定性に関する議論も含めて、第一原理計算による熱電変換物質デザインをすすめていく。また、Skyrmion結晶以外で、低次元化によって異常輸送が重要性が顕著となる系を探索し、高効率な熱電変換物質デザイン指針の構築をおこなう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予算の充足率により、計画遂行のために購入予定であった、小型計算機のスペックを下げ、購入時期を次年度以降に変更した。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初購入予定であった、マルチコアの計算機(1台)のスペックを下げて低価格のものへ変更し、マルチコアの小型計算機(複数台)を購入し、データ解析、プログラム開発用に整備する。
|