研究実績の概要 |
本研究課題では、電流が磁性体内部の内部磁場によって曲がることによって生じるホール効果:異常ホール効果の起源について継続して調べてきた。また、物質の両端に与えた温度差によって生じた電流によって生じる異常ホール効果:異常ネルンスト効果の起源を明らかにすることで新たな熱電効果の大きな物質をデザインすることを目的としてきた。 2020年度は異常ホール効果、異常ネルンスト効果の起源について、理論的に詳しく調べた研究について、論文:S. Minami, F. Ishii, M. Hirayama, T. Nomoto, T. Koretsune, and R. Arita, "Enhancement of the transverse thermoelectric conductivity originating from stationary points in nodal lines", Phys. Rev. B 102, 205128(2020)を出版した。従来、異常ホール効果、異常ネルンスト効果の起源について、Weyl点の分布に注目した理論解析が多かったが、本研究では、ベリー曲率が大きくなる運動量空間でのエネルギー縮退:ノーダルラインに注目し、そのノーダルラインが形成するバンド分散の停留点、ファン・ホーベ特異点が大きな異常ホール効果、異常ネルンスト効果発現に重要であることを明らかにした。さらに、ハーフホイスラー型強磁性体CoMnSbについて、熱電変換材料としての応用を想定し、第一原理計算から熱伝導率、無次元性能指数ZTを見積もった研究成果をA. Hori, S. Minami, M. Saito, F. Ishii, "First-principles calculation of lattice thermal conductivity and thermoelectric figure of merit in ferromagnetic half-Heusler alloy CoMnSb", Appl. Phys. Lett. 116, 242408(2020)として出版した。また、ナノ物質デザインの試みとして、表面合金のモデリングに取り組み、その成果をM. Nur, N. Yamaguchi, F. Ishii, "Simple Model for Corrugation in Surface Alloys Based on First-Principles Calculations", Materials 13, 4444(2020)として出版した。
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