研究課題/領域番号 |
16K04876
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中西 寛 明石工業高等専門学校, 専攻科, 教授 (40237326)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子架橋 / 分子エレクトロニクス / 接合界面 / 機能性分子 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
本研究の要は、分子性架橋を構成し機能を司る分子の周りに金属電極を配置し、そこに電位を印加することにより、分子に摂動を加え分子の特性を評価することにある。本年度は、その電極となる金属表面上での分子の安定性について、分子をフラグメントに分けて第一原理計算を援用して調べた。電極金属として白金(Pt)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)等および、その構造として面心立方格子では(111)六方最密格子では(0001)のフラット表面、およびそれぞれのステップ表面を取り上げた。分子としてはハイドロカーボン(HC)(メタン、エチレン、およびそれらのフラッグメント)を扱い、その不安定さ、分解触媒反応に注視した。 計算結果より、一般的傾向としてHCから、水素がはぎとられるほど、その分子の表面における吸着エネルギーの絶対値が増すことが分かった。これは、これらの表面における、分子の解離(分解)反応が発熱反応で、分解触媒作用を有していることを示している。特にステップ表面ではその触媒作用は増強されていることがわかった。例えばCH_4が、解離(分解)してCH_(4-n)とnHが共吸着した場合(n=0~4)は、Ni(111)フラット表面における吸着エネルギーが -0.2 ~ -0.8電子ボルトに対し、Ni(211)ステップ表面のステップサイトでは、―0.25 ~ ―1.2電子ボルトであった。電極表面としては、分子と接する場合、原子スケールでの平滑さが要求されることがわかった。次年度以後での電極配置の計算では、この分解触媒作用に留意して研究を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
他の研究から、金属表面が分子を分解する触媒作用があることがわかり、本研究において先にその分解触媒作用を調査した。吸着分子は完全な分解に至らない場合も分子内の結合を弱めることが明らかになった。この知見は、電極を配した分子性架橋システムは、真空中で架橋した場合とは異なる周辺環境を分子にもたらすことを示す。このことは、予定外の大きな進展ではあるが、導入予定であった計算機材であるクラスター計算機エレメントの入手が困難となり、計算可能量が限定されたため、予定の研究に未着手が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)架橋システムのパーツ特性の再評価については、当初予定どおり半年続ける。 (2)周辺配置電極の作り出す周辺環境の調査については、平成28年度得られた金属表面自体がもつ触媒作用の効果に留意しながら、電極配置を決定しその効果電位依存性の調査を、平成29年度導入するクラスター計算機エレメントを用いて開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
政治情勢の急変による急激な円高で、導入予定のクラスター計算機エレメントの導入が困難となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度と平成29年度の予算を合算し、クラスター計算機エレメントを導入する。機種を最新の機種に変更することにより当初予定の演算性能を確保する。
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備考 |
明石高専 研究・教育シーズ集
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