生体分子機械と称されるヘモグロビンの機能と構造からヒントへ得て「人工的な複数の電極で支え、囲まれたポルフィリン分子架橋系」を考え、その電極の構造配置、電極間電圧等を変えることにより分子の電子的環境を修飾し、機能発現させる分子性架橋デバイスに関する計算機マテリアルデザインを行った。電極としてポルフィリン分子にオーミック接続する電極(以下、ソース・ドレイン電極と記載)とポルフィリン分子周辺に空間を隔てて配置する電極(以下ゲート電極と記載)を取り扱った。ゲート電極による機能発現には、ポルフィリン分子面に平行に電場を印加するゲート電極配置が、垂直に印加の場合より有効であることが分かった。特に中心金属のd電子数が多い(銅、亜鉛等の元素)では、ポルフィリン分子のπ電子状態がフェルミレベル近傍にあるためポルフィリン分子面内方向への電子双極子誘起が容易で、電場によるバンドギャップ制御を効果的に行えることを見出した。 ドレイン・ソース電極間のバイアス電圧依存性においては、中心金属がコバルトのテープポルフィリンにおいて、多数スピン電子に対しては典型的な半導体のI-Vカーブ特性を示すのに対し、少数スピン電子に対しては負性抵抗を示した。多数スピン電子バンドギャップ内のバイアス電圧では、非線形電子部品としての応用が考えられる。またスピン依存性を積極的に利用した磁気センサーデバイス、スピントロ二クスデバイスへの応用も考えられる。 ポルフィリン中心金属へのガス分子吸着とゲート電圧印加においては、中心金属をコバルト、吸着ガス分子を一酸化炭素、分子面に平行電場を印加するゲート電極配置で、バンドギャップの印加電場依存性が、ガス分子吸着の有無により増減傾向が逆になることを見出した。この特性からは、ガスセンサーデバイスとしての応用が期待できる。 さらに、金属-分子反応性の知見を集め電極に好適な金属元素の選定も行った。
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