研究課題/領域番号 |
16K04879
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
原 正大 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50392080)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グラフェン / 酸化物ナノシート / スピン流 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、酸化チタンナノシートとグラフェンの複合構造の作製と測定を中心に行った。スタンプ法を用いた積層技術の確立にも取り組んだが、綺麗な接合界面を作ることが難しいという点が課題として残った。様々な積層方法を検討した結果、Langmuir-Blodgett法を用いて、酸化チタンナノシートをグラフェン上に積層する方法が最適であったため、この方法を用いてグラフェン/酸化チタンナノシート複合素子を作製し、ゲート電圧依存性や紫外光応答性の測定を行った。また、ケルビンプローブ顕微鏡を用いて、紫外光照射時の電位の変化を観察した。これらの測定から、グラフェンと酸化チタンナノシートの界面において、紫外光照射時に電荷移動が起きていることを示唆する結果が得られた。 グラフェンを用いたスピン流の研究に発展させるための予備実験として、通常の非局所測定のスピンシグナルの観測を試みた。パーマロイを磁性体電極とし、グラフェンとの接合界面に酸化アルミニウムを挟むことにより、明瞭なスピンシグナルを観測することが出来た。また、素子構造を変化させることにより、通常とは異なるシグナルも得られており、グラフェンのバリスティック性との関連を今後調べていく予定である。酸化物ナノシートの磁性に関する研究も進めており、酸化マンガンナノシートの作製及びXMCD(磁気円二色性)測定を行った。低温にすることで、強磁性を示す兆候が得られており、引き続き実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンと酸化チタンナノシートの積層構造の作製に成功しており、研究は順調に進んでいる。グラフェンを用いた素子においてスピンシグナルの観測にも成功しており、次年度以降の研究につなげる準備が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
グラフェンのスピン流の測定では、酸化膜として蒸着による酸化アルミニウムを用いているが、酸化物ナノシートに変更して研究を進める。また、グラフェンの移動度を向上し、スピン流とバリスティック性との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
4月に発生した熊本地震の影響により、研究計画や物品購入の予定を一部変更する必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
地震からの復旧作業は概ね完了できたため、前年度の研究結果を発展させるための物品購入等を計画している。
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