研究課題/領域番号 |
16K04885
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齊藤 健二 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60397669)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リン化モリブデン / 液相成長 / Oriented Aggregation / 水素生成電極触媒 |
研究実績の概要 |
単一機構成長を通したMoPの液相合成の実現に向け、Moクラスターの生成、および正四面体構造の白リン(P4)を構成単位とする高分子の赤リン(Pn)との反応性を当該年度に検討した。「現在までの進捗状況」に記載した種々の検討を行った結果、エチレンジアミン(en)を溶媒とするソルボサーマル法により、非晶質のMoPが合成できることを見いだした。具体的には、MoCl5のen溶液中にNaBH4を滴下することでMoクラスターを生成させた後、Pnを添加してソルボサーマル処理を行い、非晶質のMoPを得た。N2雰囲気下、本物質を焼成することで結晶化させた。DMSOを溶媒とし、同一条件で合成を試みたところ、ソルボサーマル合成後の粉末を焼成してもMoPの存在は一切確認できなかった。したがって、ソルボサーマル法に用いる溶媒を適切に選択することが本アプローチにおいて重要であることがわかった。enは二座配位子として機能するため、MoCl5をen中に溶解させた際、支持配位子のClと置換してMoのen錯体が形成されると考えられる。錯形成によってNaBH4による還元速度が低下し、Moクラスター同士の凝集の抑制と共に、Pnとの反応性が向上したと想定される。MoPの合成には、金属MoとPnとの接触が不可欠であり、クラスターの表面エネルギーを低下させてナノ構造を安定に保持するための一般的な保護基は使用できず、これが本研究の主な課題であった。一方、enは還元速度にのみ影響を及ぼし、金属クラスターとは相互作用しないため、本アプローチで用いる反応溶媒に適していると結論付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初、Mo源をMoCl5に、還元剤をNaBH4にそれぞれ固定し、溶媒の種類をパラメーターとしてMoクラスターのサイズ特性を検討した。しかし、NaBH4による溶媒の分解反応が競争的に進行すること、および再現性が思わしくないことから、分光法と動的光散乱法を組み合わせた当初案は困難であることが判明した。そこで、in-situでMoクラスターを生成させ、Pnと直接反応させるという方針に変更し、MoPが液相合成できることまで確認した。
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今後の研究の推進方策 |
enを溶媒とするソルボサーマル法で得たMoPは単一物質ではなく、Pnをコア、MoPをシェルとする二重構造になっていることが元素分析等の結果から強く示唆された。これは、出発物質として用いたPnの粒子サイズが大きいことに起因すると考えられる。そこで次年度は、Pnのダウンサイズ化をまず行う。Pnのダウンサイズ化は、物理的粉砕およびナノ粒子の化学合成により検討する。後者は近年報告された論文を参考にして合成する。想定通りのダウンサイズ化が達成できない場合、当初案のP4をリン源として用いる。 MoPの単一化が達成されれば、成長機構の解明と共に、電極触媒能の評価を行う。さらに、還元剤の種類を変え、Moクラスター生成における電子移動のドライビングフォース依存性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、テニュア審査が数回開催され、その準備等に多くの時間を費やす必要があったため、当初予定していた数の国内および国際会議に出席することが困難であった。当初案の使途の中で、旅費が比較的大きなウェートを占めていたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究推進および研究発表・交流のため、消耗品費と旅費のために当初の計画通り支出する。また、研究補助員のための人件費が増大しているため、前年度から繰り越した費用を人件費に充当する予定である。
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