本研究課題は、水素生成のための電極触媒として優れた性能を示すことが知られているリン化モリブデン(MoP)を液相成長させるための技術開発を行うことを目的とする。初年度は主に、MoCl5のNaBH4による還元反応速度をエチレンジアミンで制御し、赤リン(Pn)と反応させたところ、Pnをコア、MoPをシェルとするコンポジット構造体が得られることを明らかにした。次年度は、MoPの単一化のため、還元剤の種類とPnの物理的または化学的ダウンサイズ化を主に検討した。還元剤にCOを、リン源に黄リン(P4)を用いることでモリブデンとリンとの反応性が向上することを見いだした。最終年度は、昨年度の実験条件を精査し、電気化学的水素生成活性を評価した。液相成長後に得られる非晶質のMoPの化学組成は、PnよりもP4を用いた時の方が理論値に近かった。本物質を窒素雰囲気下で焼成して結晶化させると、モリブデンとリンの比率に差異はなくなった。いずれのリン源を用いた場合でも、得られるMoPの粒子サイズは200 nm前後となり、固相法で得たもの(10 μm程度)よりも格段に小さくなった。結晶化したMoPの懸濁液をTi板上にドロップキャストし、窒素雰囲気下で焼成することで電極を作製した。Pnを用いて得たMoPの示した電気化学的水素生成反応における過電圧は、P4をリン源として得たもの、および固相法で作製したものよりも小さい値を示した。 以上のように、MoPを液相成長させるための合成法を見いだし、得られた物質が電気化学的水素生成に活性を示すことを明らかにした。
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