フッ素化処理技術による様々な無機ナノ粒子の表面改質を提案する。平成28年度と平成29年度には、フッ素ガスを用いてそれぞれ酸化チタンナノ粒子の表面改質と酸化スズや酸化ジルコニウムの表面改質を行い、水での高い分散安定性が得られた。平成30年度では、異なる形状と構造をもつ炭素系材料の分散安定性に及ぼす表面フッ素修飾の効果に関する検討を行った。1)市販の天然球状黒鉛粒子(平均粒径50um)の場合、25℃と1hでフッ素圧を10~760 torrに変化させフッ素化を行った。XPS分析結果からは、380torr以上になると、288eV付近のC-F結合ピークが出現されており、未処理試料(91°)より少し高い接触角(>100°)を示した。しかし、100torr以下の試料の場合、水の接触角が低下(77°)したことから、一部分の表面表面にフッ素が結合され、極性表面を作製し、極性溶媒である水との濡れ性が改善したと考えられる。2)黒鉛ナノ粒子(平均粒径20nm)をフッ素化した場合、25℃と1hで760torr以上でフッ素化を行うことで、水による接触角が139°となり、温度を100℃まで増加すると、接触角が156°を示す白色フッ化黒鉛の作製に成功した。また25℃と5h、1140torrでフッ素化を行った結果、接触角が3°となる超親水性を示した。これらの結果から、ナノ粒径をもつ黒鉛粒子であるほど、その効果が大きく、フッ素化の条件により親水性や撥水性表面を調整できることを確認した。3)黒鉛と同じ構造をもつ窒化ホウ素(BN、平均粒径100nm)のフッ素化の場合、25℃と1h、100torrのフッ素化で高い分散安定性を示していることを水溶液中での粒子の沈降実験で確認した。しかし380torr以上のフッ素化試料の場合、未処理試料と同程度の数値であった。
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