研究課題/領域番号 |
16K04890
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
平 修 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (30416672)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Nano-PALDI / 体内動態 / 生体異物 |
研究実績の概要 |
.疾病との関連解明 我々は、日常より多くの生体異物に日々囲まれて生活している。勿論、病気になった際の治療に必要な薬剤もあるが、意図せずに接触、摂取している生体異物がある。それらが体内のどこに蓄積され、種々の代謝を受けた場合、どのような影響を受けるのかについては十分に分かっていない。既存法では検査に3日以上要する。今回、染毛剤や化粧品の中には安定剤として2-オクチン酸メチル(2-OAm: Mw 154))と呼ばれる成分が含有している。ある肝臓疾患患者を調べてみると、主に女性か毛染めをした方が多かった。肌に直接塗布する化粧品類に含まれる化学物質が、経皮吸収するのか、吸収したならば「どこ」に移動し生体に影響を及ぼすのかNano-Particle assisted laser desorption/ionizationイメージング質量分析法により視覚的に解析した。 長期塗布群の肝臓に2-OAmが蓄積していることが視覚的に分かった。また、単回塗布群では、皮膚に塗布してから6時間後に肝臓に2-OAmが確認され、24時間後にはほぼwash outしていることがわかった。次に、2-OAmを皮膚に長期間塗布したマウスの肝臓を用いて、2-OAmの蓄積部位を検討した。その結果、肝細胞に加えて、胆管にも2-OAmの蓄積がある事がわかった。この事から、2-OAmの胆管への異常蓄積がミトコンドリア抗体の出現と胆管の選択的破壊の双方に関与している可能性が示された。普段、使用する化粧品などの含有物質であり基礎科学・実学共に重要な知見である。これにより、以下の仮説を立てることができる。2-OA皮膚塗布→経皮吸収による肝臓への薬剤送達→長期塗布による肝臓(胆管)への蓄積→抗原と認識→アポトーシス→炎症。生体異物が臓器炎症のトリガーとなることを視覚的に示す事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験も計画通り進行しており、計画書に記載したスケジュールで研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
計画書にあるとおり、他の生体異物が生体へどのような影響を与えるのか、疾病を引き起こす場合とそうでない場合の閾値はどこにあるのかなども解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験が必要最低限数で実施でき、2-OAmが炎症のトリガーとなっていることをたため予算を次年度へ繰り越し、2018年度の実験費に宛てることとした。
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