最終年度は、ファンデルワールス層状カルコゲナイドの原子層の入れ替わりの構造的視点からの考察と、それに伴う電子状態の変化について理論計算をもとに研究を推進した。 GeTe-Sb2Te3の異種テルライドのヘテロ構造において、原子および原子層レベルでのある層から別の層へのスイッチング現象について構造的に明らかにした。各ファンデルワールス層の状態密度やフェルミエネルギーといった電子状態は、層を構成する原子の組成に大きく依存することがわかった。特に、化学量論組成と、準安定的な非化学量論組成においてフェルミエネルギーの位置が大きく変わることを明らかにした。 研究期間を通じて、さまざまな種類のファンデルワールス力によって結合した層状カルコゲナイド化合物やそのヘテロ構造について研究を遂行した。著名論文誌に掲載された主要な実績として、(1)電子励起に起因したMoTe2の構造変化の理論的予測、(2)数原子層GaN薄膜のエピタキシャル基板としてのMoS2の提案およびGaNの電子状態に及ぼす応力の影響、(3)GeTe/Sb2Te3超格子におけるディラックコーンの形成と電子状態の応力による制御、(4)GeTe/Sb2Te3超格子におけるファンデルワールスギャップ近傍での原子配置の再配列に関する理論的研究が挙げられる。 本研究プロジェクトによって、ファンデルワールス層状カルコゲナイドの特に電子状態に関する理解が深まり、原子レベルの超極限微細デバイス実現に向けて理論的見地より大きな貢献をした。
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