これまで,透明導電体であるスズドープ酸化インジウム(ITO)をコアとし,その表面を酸化チタンなどで被覆した同軸ナノファイバ(NF)を,電界紡糸法で同軸型スピナレット(ノズル)を用いて作製し,色素増感太陽電池の光電極,もしくは単一電極で光発電と蓄電を実現できる光蓄電池(PRB)の電極に用いたときの発電および蓄電特性からその効果を調べてきた.本年度は以下の成果を得た. (1) ITO-NFをコアに,蓄電材であるWO3をシース層とした同軸NFを用いたナノ構造PRB電極において,WO3の表面を直接N719色素で増感することで,電解液中のLiイオンのWO3内への移動を妨げることなく光吸収帯域を広げることができ,結果的に光蓄電電荷量を従来の20倍向上させることができた. (2) ITOは高温処理によって伝導性が低下し,耐酸性にも乏しいことから,フッ素ドープ酸化スズ(FTO)のNFからなる不織布の作製を行った.将来の不織布型デバイスの構築に向けて,FTO-NFの自立したフレキシブル導電基板の実現に向けた導電性とフレキシビリティの改良を行った. (3) (1)のITO-コアNFをFTO-コアNFに置き換えた多層同軸NFによってナノ構造PRB電極を作製した.これにより酸性電解液中のプロトンの蓄電材への挿入が可能になり,蓄電容量と充放電速度が大幅に改善された.さらに,光電変換材として無機系のαFe2O3でさらに同軸NFの表面を薄くコーティングすることで,光蓄電電荷量を飛躍的に向上させた. (4) 将来の全固体型多層同軸NFフレキシブル光蓄電池の実現に向けて,リン酸トリリチウム(LiPO)で被覆したNF膜の試作を行った.残念ながら,LiPO層の形成過程でコアNFと反応し消失することが分かったが,LiPO/WO3平坦積層膜ではLiイオンのWO3内への拡散移動を確認した.
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