研究実績の概要 |
本研究で提案している、基板上にナノ粒子を2次元的に配置し(第1段階)、所望の粒子に電子線を照射し(第2段階)、その後、基板を洗浄することで、所望の粒子だけを基板に残す(第3段階)パターニング方法に関して、前年度までにAuナノ粒子で検討を行い、各段階での問題点を克服してきた。最終年度では、Au以外のナノ粒子に関しても同様の検討を行った。 まず、Agナノ粒子に関しては、Auとほぼ同様の条件で問題なくパターニングを行うことができた。Agナノ粒子もプラズモニック導波路等への応用が期待できる。 次に、エレクトロクロミック(EC)特性を持つPrussian blue(PB)ナノ粒子に対して検討を行った。EC現象とは、外部からの電圧負荷による可逆的な色調変化を起こす現象である。PBナノ粒子に関しては、第1段階および第3段階には大きな問題はなかった。しかし、第2段階において、過大な電子線照射により結晶構造が壊れて、EC現象を起こさなくなってしまう問題が生じた。そのため、適切な電子線照射量を検討した。その結果、10~100 C/m2のドーズ量で照射を行えば、EC特性を壊さずにパターニングできることが明らかとなった。加速電圧などのこれまでの結果を合わせて用いることで、微細かつ複雑なパターンを作製することに成功した。この成果は、論文としてJ. Vac. Sci. Technol. B, 37, (2019), 031204に公表した。 現在の半導体集積回路において基板に回路のパターンを作製するにはリソグラフィー法が使われている。この方法では、成膜後、レジストの塗布、露光、現像、エッチングなど多数の工程が必要である。本研究の手法では、ナノ粒子を基板上に並べた後、所望の形状に電子線を照射、洗浄するたけで、目的のパターンを作製できる。これにより、パターン作製に要する工程を減らせる可能性がある。
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