研究課題/領域番号 |
16K04905
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研究機関 | 阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
吉田 岳人 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (20370033)
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研究分担者 |
原口 雅宣 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (20198906)
梅津 郁朗 甲南大学, 理工学部, 教授 (30203582)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パルスレーザーアブレーション / 気相反応 / ナノ結晶 / ナノ粒子 / 複合ナノ構造体 / プラズモニクス / 光電子機能 / 光触媒活性 |
研究実績の概要 |
本中間年度は,気相パルスレーザーアブレーション(PLA)法によるTiO2薄膜下へ,Agナノ粒子を内包担持させることで,これまでのAuナノ粒子に加えて,2種目の金属ナノ粒子による可視光応答型プラズモニック光触媒を創製・評価した.Agナノ粒子をTiO2薄膜下かつSi基板上に配置したのは,Auよりは化学的に活性なAgナノ粒子が触媒動作中に溶出してしまうことを防ぐためである. 気相PLA法による堆積と短時放射加熱(RTA)法によるポストアニールを組み合わせることで,Agナノ粒子の担持状態は,面積平均粒径:20-35nm,被覆率:24-29%,真円度:0.92-0.94であった.特に面積平均粒径は堆積時間とともに単調に増加する傾向をもつので調整することが可能である.これら担持されたAgナノ粒子の上層に,気相PLA法により,アナターセTiO2ナノ結晶薄膜を膜厚50nm堆積することで主触媒とした. 上述のAgナノ粒子に対して光学測定を行うと,波長440nm付近に鋭い光吸収(ディップ)が観測された.これはすでに報告されているAgナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による吸収波長と一致している.また気相PLA法によるAgナノ粒子内包担持TiO2薄膜系に関しては,可視光(410nm)励起の光触媒活性を評価した結果(メチレンブルー(MB)分解法),同じ製法で堆積したアナターセTiO2ナノ結晶薄膜よりも高い光触媒活性が得られることを確認した. 可視光(410nm)励起での光触媒活性の増大が観測できたことは,この波長域でLSPR吸収を示すAgナノ粒子による電場増強効果が関与していると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本中間年度は,これまで研究成果を挙げてきたAuナノ粒子担持TiO2ナノ結晶薄膜に加えて,Agナノ粒子の分散堆積法を開発しその構造・光学特性の評価及び主触媒であるアナターセTiO2ナノ結晶薄膜の下層にAgナノ粒子を内包担持するプロセスを構築することに費やした.これは先行研究調査の結果,Agナノ粒子は光触媒動作中に溶媒に溶出してしまう傾向を持つことがわかり,その対応策として考案・構築した. このため当初目標である局在表面プラズモン共鳴(LSPR)周波数の異なる複数金属種ナノ粒子を担持した複合ナノ構造の作製までに至ることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
本中間年度に開発・評価した,Agナノ粒子を内包担持TiO2ナノ結晶薄膜の構造については,Agナノ粒子と溶媒とは直接界面を持たず間にTiO2薄膜が存在している.このことは金属/溶媒間の電荷(電子)転送に影響を与えるため,その評価と改善法を検討する必要がある.具体的には上層主触媒TiO2の膜厚と結晶構造を最適化する. また当初目標である,複数金属種ナノ粒子を担持した複合ナノ構造の作製に着手せねばならない.金属種はAgとAuとする.光触媒活性評価の面では,可視光全域の評価に適応できる気相(気密)法を導入する.この方式の利点は比表面積の大きいナノポーラス構造の光触媒の特性を活かせる点にある.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画として複数種の金属ナノ粒子を担持した複合ナノ構造プラズモニック光触媒の創製を目指しているが,初年度のAuナノ粒子に続いて当該中間年度はAgナノ粒子(単独)担持の検討に終始した.結果としてAgナノ粒子の化学的不安定性を補う,主触媒下層内包担持型プラズモニック光触媒の創製プロセスとその可視光応答性を確認することができた. しかしながら,AuとAgの2種金属ナノ粒子同時担持型の複合ナノ構造への取り組みに着手できていない.最終年度はこれを推進することで,高価格のAuターゲットを新規購入する見込みなので,ここで残額を執行する見込みである.
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