研究課題
本研究課題の目的は、等方的な力学作刺激である圧力を用いて細胞内で働く分子機械を操作する事で、細胞が生きたままの状態で、その形態および活性を操作できる手法を開発することにある。令和元年度は、生きている細胞・個体を対象にして研究を実施した。細胞は外部からの刺激に応じて、細胞内のイオン濃度を大きく変化させることが知られている。このイオン濃度変化は、細胞内で駆動する分子機械の駆動様式を大きく変化させることがある。ここでは、圧力刺激による細胞内のCa2+濃度変化について、緑藻細胞クラミドモナスの軸糸振動を利用して調べた。クラミドモナスは細胞内のCa2+濃度が高くなると、軸糸振動の様式を大きく変え、後ろ向きに泳ぐ性質がある。高圧力顕微鏡下でクラミドモナスの軸糸振動を高速ビデオ撮影したところ、80MPaでは野生株の半分は後ろ向きに泳ぐことが明らかになった。この遊泳運動の逆転現象は、水溶液中のCa2+濃度に依存しないため、高圧力は細胞内にある小胞体などからCa2+の放出を誘導し、細胞内のCa2+濃度を上昇させていると示唆された。次に、生きた個体内での細胞の圧力応答を調べた。高圧力を生きた線虫にかけたところ、老化抑制に関与する転写因子FOXO3aが細胞質側から核内へと移行する様子が観察された。さらに、1日1度の圧力処理を線虫に施すことで、寿命が延びることも確認された。以上のように、生きた細胞を対象にして静水圧によりドラスティックに生命活動を操作できることを示すことができた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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