健康状態に依存した生体内の種々の代謝状況により複雑に構造変化するAGE群と、様々な分子形態依存的に挙動するガレクチンネットワークとの関連性およびガレクチンネットワークと疾患との関連性について前年度より継続して解析を行い、最終年度では以下の成果が得られた。 AGEの“糖領域の構造”がガレクチンファミリーとAGEとの相互作用の阻害物質になり得るかどうかについて検討を進めた結果、グリセロアルデヒド-AGEの糖領域であるグリセロアルデヒドにはガレクチン3だけでなく、タンデムリピート型ガレクチンであるガレクチン8やガレクチン9とも相互作用を示さない事が明らかとなった。これらのガレクチンファミリーに共通する機能性には細胞接着および免疫細胞の活性化がある事から生活習慣に付随して生じるAGE群の厳密な見極めをガレクチンファミリーが細胞接着や免疫系を介して調節している事が考えられた。本研究の最終的な応用展開として、培養骨格筋細胞であるマウス大腿筋由来C2C12細胞を種々の糖濃度で培養し、高血糖状態を再現した細胞を作成し、これらをガレクチンファミリーとAGE群の相互作用における基盤情報が搭載されたバイオセンサチップを用いて解析した結果、ガレクチンネットワークを阻害する親和性パターンが得られた。この結果、糖尿病や長期高血糖状態を起因とするAGEの発生は生体内におけるガレクチンネットワークを阻害することで様々な合併症を誘発している事が確実であることが明らかとなった。本研究から、糖尿病や長期食習慣の乱れなどにより生じる長期高血糖状態が誘発する合併症およびAGE群との関係性が明らかにされ、合併症併発のリスク診断への応用利用が可能である事が明らかとなった。
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