研究実績の概要 |
本研究では,磁場中での電析(磁気電析)がキラル界面を生成することに着目し,ローレンツ力により励起されるマイクロMHD渦流の自己組織化状態とキラル界面形成との関係を研究した.さらに,多様な磁気電析条件でキラル対称性が破れる可能性を探索し,生体分子のホモキラリティの起源を探求した.下記に研究成果を列挙する. 1)マイクロサイズのミラーとして働くグアニン微結晶をトレーサーとして用い,磁気電析で発生するマイクロMHD渦流の直接観察に成功した.その結果,電極界面のゆらぎがマイクロMHD渦流を生じさせ,垂直MHD対流下で,自己組織化した渦流状態を形成することが判明した.このような渦流状態の中で,物質移動の対称性が破れキラル界面が形成される. 2)垂直MHD対流がキラル界面形成に果たす役割を調べた.電極を筒のなかに埋め込み,銅の磁気電析を試みた.筒が十分に長いと,垂直MHD対流は電極界面まで到達することができないため,キラル界面が生成しない.この結果は,垂直MHD対流下のキラル界面形成のモデルが正しいことを意味している. 3)垂直MHD対流が強く作用する微小電極を用いて,銅の磁気電析,磁気電解エッチングを行い,界面キラリティを調べた.磁気電気化学キラリティは,印可磁場の方向を反転するとキラリティも反転する.ところが,100, 25マイクロmの微小電極においては,磁場を反転してもキラリティが変化しないという特異な結果が得られた. 4)磁気電気キラリティにおよぼす特異吸着効果の研究も行った.塩化物イオンは代表的な吸着剤であり,マイクロ渦流の自己組織化構造を変化させるものと期待される.結果は,ここでも磁場反転に対しキラリティは変わらないというものであった.これら結果はキラル対称性の破れを意味し,重要な発見であり,生体分子のホモキラリティ解明への手掛りになりうる.
|