現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EVの計測実験に先立って、チップ型エクソソーム解析システム試作機の光学系を最適化し、30nmまでのエクソソームの計測を可能にするべく検出感度の改善を検討した。その結果、これまでの50nm以上の検出感度を30nm以上に改善した。 この条件を用いて、ヒト乳がん細胞株のうち、悪性度の指標として知られる表面HER2タンパク質の発現量が高い細胞株 (SK-BR-3とBT474細胞)と低い細胞株(MDA-MB-231とMCF7細胞)の粒径とゼータ電位の計測を行った。エクソソーム試料は以下の手順で準備した。細胞を無血清培地で48時間培養し、その培養上清を分画遠心法で分離、精製した。具体的には、まず、細胞片などの大きい粒子を取り除くため、培養上清を300×g で10 分、2,000×g で20 分、10,000×g で100 分遠心した。エクソソームを含む上清を100,000×g で200 分遠心してエクソソームを沈降させた。10 mM HEPES 緩衝液で懸濁した後100,000×g で200 分遠心して、エクソソームを含む細胞外小胞(EV)の分画を得た。EV分画を10 mM HEPES 緩衝液で懸濁した。分析チップのマイクロ流路にEV試料を流し込み、個々のEVのサイズおよびゼータ電位を解析した。粒径分布は、ブラウン運動解析から得られる拡散係数からアインシュタイン・ストークスの式を用いて算出した。また、パーティクル電気泳動実験により得られる電気泳動移動度(EPM)からヘンリーの式を用いて算出した。4種類全ての細胞株についてEVに30nmまでの粒子が存在し、その粒径とゼータ電位を計測できることを明らかにした。また、エクソソームマーカータンパク質であるCD9、CD63、CD81、HSP70およびHER2の発現量について、ウェスタンブロットによる解析に着手した。
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