研究課題/領域番号 |
16K04917
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇野 秀隆 名古屋大学, 未来社会創造機構, 研究員 (70749663)
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研究分担者 |
王 志宏 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任助教 (20377980)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経細胞ネットワーク / プレーナーパッチクランプ / 細胞培養 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー、筋委縮性側索硬化症等の神経変性疾患はいまだに原因不明、治療法も不明の難病である。理由は、患者の脳神経を存命中に採取できないという問題から創薬に必要なハイスループットスクリーニング技術がないことも大きな理由である。ハイスループットスクリーニングには多点計測に利用できる神経細胞ネットワークの形成技術が必須である。本研究では、ラット大脳皮質や海馬の神経細胞を利用し、当グループが発明したセルケージ基板上にできるだけ良く定義された神経細胞ネットワークの形成技術を確立する。 28年度は、ハイスループットスクリーニング応用を視野に入れて、培養型プレーナーパッチクランプ技術の基礎を確立した。具体的には神経細胞用プレーナーパッチクランプの基板を、当面の基礎実験に必要な十分な枚数を製作した。基板の基本特性として、、ネットワーク形成後のシール抵抗を計測し、シール抵抗10 MΩ前後の基板を完成させた。次に基板上に施した細胞の遊走を制限するセルケージ内に単一神経細胞を設置し、ハイスループットスクリーニング用神経細胞ネットワークを形成させ、免疫染色(GAD67/65, シナプシン、チューブリン、DAPIなど)にてネットワーク構造を明らかにした。次にイオンチャネル計測として神経細胞ネットワークを、パッチクランプ基板表面に製作し、自然放出シナプスチャンネル電流の計測を行い固有の電圧ー電流特性を有するminisの測定に成功した。また、ハイスループットスクリーニング応用の観点からの単一細胞制御ネットワークの基本特性を明らかにする目的で単一細胞制御ネットワークについて、Ca2+イメージングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではグリア細胞をセルケージ基板上で培養し、これを神経細胞のフィーダー細胞として利用する条件を探す予定であったが、基板作成及び神経細胞ネットワークの形成に予測以上に期間を要したためにグリア細胞に関しては次年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、ヒト神経細胞が利用できる点がin vitro ネットワークの強みなので、iPS細胞技術を利用して、ヒト神経細胞を形成し、28年度に確立した単一細胞ネットワーク製作技術に適用する。同一のiPS細胞から、大脳皮質神経細胞と運動ニューロン、グリア細胞への分化誘導技術を開発する。セルケージの内部の単一細胞を運動ニューロンとして、当グループのかねてからの目標である筋委縮性側索硬化症(ALS)の研究に供することを目指す。また、セルケージの内部の単一細胞を運動ニューロンとした、ヒト単一細胞ネットワークについて、免疫染色、自然放出シナプスチャンネル電流計測、Ca2+イメージング、minis解析などを行い、内部の単一細胞を運動ニューロンとした、ヒト単一細胞ネットワークの基本特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では予期していなかった基板作成及び神経細胞ネットワークの形成に予測以上に期間を要したために次のフェーズであるグリア細胞をセルケージ基板上で培養し、これを神経細胞のフィーダー細胞として利用する最適条件の探索に関しては次年度に行うために、次年度使用額として繰り越したい。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定していた神経細胞ネットワークとグリア細胞との共培養を行うための培養液等、基板のセルケージパターン改良に伴う経費、成果報告(論文、学会発表等)に伴う予算の繰り越し。
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