研究実績の概要 |
本研究では、臓器・組織由来の乳酸分泌量を連続計測するシステムについて開発を進め、特に脳内のエネルギー代謝に伴う乳酸生成のリアルタイム計測に応用するとともに開発した技術の更なる応用展開についても検討した。 研究機関全体を通じた成果として、乳酸分泌量のリアルタイム計測システムを新規に開発し、(1)ブロック脳標本から分泌する乳酸量の連続計測を行い、その変動がブドウ糖濃度と相関する様子について評価できることを実験的に示した(IEEJ Transactions on Sensors and Micromachines 2017)。(2)またこのシステムにより検出される乳酸量が標本への薬物刺激等に依存することを明らかにした。(3)加えて、本システムが臓器・組織レベルのモニタリングのみならず、個体レベルでのモニタリングに応用可能であることを示した。 特に2018年度においては、本システムを用いて実際に生体試料(臓器から個体までを含む)のモニタリングを行う応用面での研究に著しく進展が見られた。具体的には、脳標本由来の乳酸を連続的にモニタリングし、その標本に化学的刺激を加えることで乳酸量が変動する様子を明らかにした。また、研究実施計画に示した通り検出用のバイオセンサにバリエーションを持たせ、多様な物質への応用展開も行った。 特に、汗中の乳酸においては運動や医療現場でのモニタリングに利用できる可能性を実験的に示し、その成果は本年度より実施予定の研究課題(基盤C:19K04432)の基盤となっている。またオキシトシンなどのペプチドホルモンの計測が可能な電気化学式免疫センサも開発し(Proc. BMEiCON2018, Doi:10.1109/BMEiCON.2018.8609952)、乳酸以外の生体成分についても適用可能とした。
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