研究課題/領域番号 |
16K04928
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大貫 等 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60223898)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | バイオセンサ / 免疫センサ / 電気化学インピーダンス法 / 抗体配向効果 |
研究実績の概要 |
本年度はProtein G (PrG) を用いて抗体分子を直立配向させた試料を作製し,この配向性試料のセンサ特性をランダム配向試料と比較することで抗体分子の配向効果を評価した.具体的には櫛型Au基板上に 11-Mercaptoundecanoic acid と6-Mercapto-1-hexanol の混合比 1 : 3 となる自己組織化膜 (SAM) を成膜し,そのSAM表面上に PrG を化学結合させた.PrGはY字型抗体の根本部分を選択的に補足・固定化する性質を有し,本試料を抗ミオグロビンIgG抗体溶液中に浸漬することで,直立配向した抗ミオグロビンIgG抗体表面が得られる.一方,ランダム配向試料は,上記と同様のSAM表面上に抗ミオグロビンIgG抗体を直接化学結合させることで得た.これら二つの試料のミオグロビンセンサ特性を電気化学インピーダンス (EIS) 法で評価したところ,以下のことが明らかになった.1) 配向試料およびランダム試料共にミオグロビン濃度の上昇と共にシグナルである電荷移動抵抗 (Rct) 値が増加することから,両試料はミオグロビンセンサ特性を示すことが分かった.2) 配向性試料では 0.001 - 10 ng/mL の広い濃度範囲でRct の増加が認められるが,ランダム試料では 0.001 - 0.1 ng/mL の狭い濃度範囲の変化に留まる.従って,配向性試料では測定濃度範囲が高濃度側に2桁広いことが分かった.3) 両試料のRct 変化率を比較すると,配向性試料ではRctの増加割合がランダム配向性試料に比べて約3倍大きい.これらの結果より,抗体の直立配向によりセンサ特性が大きく向上することが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IgG抗体を直立配向させた試料において,センサ特性の大幅な向上が達成できた.これは当初の計画通りの進捗状況である.次年度は,この成果を足掛かりにさらに高性能なセンサの開発を行う予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
PrGは pH 3.0 以下の環境で補足したIgGを開放する.この性質を利用してセンサの再生技術の開発を試みる.すなわち一度使用した試料をグリシン-塩酸バッファーpH 2.2 に浸漬し,表面上のミオグロビン-抗ミオグロビン抗体複合体を外す.次に,新しい抗体溶液中に浸漬し,PrGに再び抗体を捕捉させる.このようにして再生した試料のセンシング特性を調べ,センサ再生技術の開発を試みる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を実施していくうえで必要な基板の一部を発注していたが,3月末までの作製・納品に間に合わず,新年度に入ってからの納品となった.なお他の研究課題と基板のやりくりをして,当該年度中の本研究に必要な基板は確保できたため実験は滞りなく進めることができた.
|
次年度使用額の使用計画 |
新年度に入り,基板納品後に購入費として支払う予定である.
|