研究課題/領域番号 |
16K04931
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
塚田 真也 島根大学, 教育学部, 准教授 (90570531)
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研究分担者 |
秋重 幸邦 島根大学, 学内共同利用施設等, 理事 (30150981)
藤井 康裕 立命館大学, 理工学部, 助教 (50432050)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 相転移 / ラマン分光 / ブリルアン分光 / リラクサー / チタン酸バリウム / ペロブスカイト |
研究実績の概要 |
光の偏光制御・低振動数測定・短時間測定が可能な角度分解偏光ラマン分光装置を活用して,常誘電相における不均一性に関する知見を深めている.本年度は,他の実験・計算手法との融合を意識して研究を行った.また,マッピングなども行い,大量のデータを効率的に画像化するようなソフトウェアの開発にも取り組んだ. 高い強誘電性相転移温度を有する二チタン酸バリウムBaTi2O5において,角度分解偏光ラマン分光を行うとともにX線二体相関関数測定や第一原理計算を行い,ラマン散乱のモードアサインを行った.均一系の計算と実験結果の両面から迫ることで,不均一性が巨視的な物性に与える影響を取り出すことができた.これまで「変位型」と「秩序・無秩序型」で議論が分かれていた相転移の機構について,「ソフトフォノンの減衰が大きい変位型」であることを明快に指摘することができた.1つの物質における強誘電性相転移を微視的な視点から広い時空間にわたって説明することができたことは大きな進展である. 高い圧電・誘電応答を示すリラクサーにおいても進展があった.Pb(In1/2Nb1/2)O3の「InとNbが整列した反強誘電体」と「InとNbがバラバラに並ぶリラクサー」を比較することによって,どうやってリラクサーが実現されるか検討した.不均一構造の静的な側面を電子顕微鏡や散漫X線散乱を通して明らかにし,動的な側面を非弾性光散乱より明らかにした.リラクサーの場合,分極ナノ領域に現れるフラクタル構造が温度を下げるにつれて変化する様子が観測された.一方,反強誘電体の場合,高温から低温までフラクタル構造の変化は観られなかった.以上のように,リラクサーと反強誘電体において,分極ナノ領域の成長が重要な役割を果たすことが分かった.「結晶の中の不均一性が創るフラクタル」という面白い自然の一面を観ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は予定通り進み,研究実績の概要にある知見に関して,論文としてまとめることができた.特に,リラクサーで観られたフラクタル構造を原子配列で制御する研究はプレス発表も行い新聞に掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
物質の不均一性と巨視的な物性の関わりについて,総まとめを行う.特に,圧電応答をしめす非鉛強誘電体材料の開発を目指す. それと同時に,角度分解偏光ラマン分光についても,計算科学とより融合させて進化させる.スペクトルの高速解析や自動モードアサインといったことを検討・実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
妻の出産のため,3月に予定していた研究会や学会を欠席した.次年度に,当初計画より積極的に研究成果公表を行う.
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