研究実績の概要 |
これまでの2年間で,放射光回折実験より不均一な構造や平均構造を決定し,その構造を基に角度分解偏光ラマン分光スペクトルを解釈してきた.その結果,二チタン酸バリウムBaTi2O5における強誘電性相転移の機構を原子スケールから巨視的なスケールまで明確に説明することができた(S. Tsukada, et al. Physical Review B 97, 024116 (2018).).また,リラクサーと呼ばれる鉛系ペロブスカイト強誘電体において,ナノメートル・ピコ秒の時空間領域において分極フラクタルを見出した(S. Tsukada, et al. Scentific Reports 7, 17508 (2017).).これらの研究では「温度」や「光の偏光角度」を変化させながら光散乱スペクトルを取得してきた. 最終年度は,「温度」・「光の偏光角度」に加えて「位置」も変化させながらラマンスペクトルを取得した.位置を変化させながらラマン散乱を測ることで,強誘電相における分域構造や双晶構造など,これまでより多くの情報を得ることができるようになった.チタン酸バリウムやリラクサー強誘電体において大量のスペクトルを取得し,大規模データを解析する手法を検討した.特に,多変量スペクトル分解法(Multivariate Curve Resolution)が角度分解偏光ラマン分光法と相性が良いことが分かった.今後,さらに様々な解析手法を検討して,大量のスペクトルに潜む物質の本質に迫っていく.
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