研究実績の概要 |
磁気冷凍は磁気熱量効果を用いた冷凍法であり,環境にやさしく省エネルギーが図れることから近年大いに注目が集まっている.強磁性から常磁性へ一次相転移する物質ではエントロピー変化が大きく,巨大磁気熱量効果を発現するので磁気冷凍材料として期待されている. 本研究では巨大磁気熱量効果を示す物質の本質的な熱伝導度を測定し,強磁性と常磁性の違いを明らかにし,熱伝導度の高い材料の開発の指針を見出すことを目的としている.本年度は昨年度までに完成した定常熱流法による熱伝導測定装置を用いて,巨大磁気熱量効果を示すMn化合物材料の熱伝導度の温度変化を測定した.測定した物質は巨大磁気熱量効果を示すMn1.24Fe0.60Ru0.16P0.46Si0.54,とMn1.30Fe0.64Ni0.06P0.49Si0.51,である.いずれの試料も最初室温では4 W/m K程度の熱伝導度を示す.ところが冷却していくとキュリー温度のところで急激に熱伝導度が減少し,相転移が完了する温度では1 W/m K程度の値となった.これは冷却中にクラックが発生しそのため電子による熱伝導が極めて小さくなったためであると解釈される.Mn1.24Fe0.60Ru0.16P0.46Si0.54についてはその後4回昇降温を繰り返して熱伝導度の温度依存性を測定したが,すべて同じラインを描き,ジャンプは見られなかった.これは一度クラックが発生した後は格子の熱伝導度はほとんど相転移に影響を受けないことを示している.すなわち試料のクラックは最初に相転移を経験すればその後はあまり増えないことがわかった.また昇温時の熱伝導度はキュリー温度で小さなこぶのような異常を示すが,これについても格子及び磁気の寄与で説明できることを示した.またこれらの物質では熱伝導度は温度とともに増加するが,その主な原因は格子による熱伝導であることも明らかになった.
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