研究課題/領域番号 |
16K04934
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
本間 道則 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (90325944)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 液晶 / 双安定 / マイクロラビング |
研究実績の概要 |
双安定マイクロパターン液晶セルにおける空間的な配向分布状態を考察することを目指し,紫外線硬化型液晶フィルムの切削試料の観察により配向分布状態を実験的に評価する手法の有効性について検討した。具体的な手順は以下の通りである。まず,紫外線硬化型液晶(UCL-001-K1,DIC)を用いてホモジニアス配向セル(厚み:50μm)を作製した。重合硬化後,ガラス基板から液晶フィルムを剥離しパラフィン包埋処理を施した。最後にミクロトームにより40μmの厚みでスライスし,短冊状の試料片とした。偏光顕微鏡により液晶フィルムの断面方向から観察したところ,短冊試料の長手方向が偏光子に平行(0°)もしくは垂直(90°)となるときに透過光強度が最少となり,45°をなすときに最大となることが確認された。これは液晶層全体に渡って均一なホモジニアス配向状態であることを意味する。以上より,ミクロトームを用いて紫外線硬化型液晶をスライスし断面方向から観察する手法が,液晶層内の配向状態を詳細に考察する有益な手段となり得ることを実証することができた。次に,双安定マイクロパターン液晶セルにおける双安定状態の安定性を考察するために,遷移時における過渡的な配向状態についてCCDカメラを用いて動画撮影による観察を行った。以下に得られた知見をまとめる。作製した液晶セルにおいては±πツイストモードおよび±π/2ツイストモードと呼ばれる異なる配向状態が得られた。これらの状態間の遷移速度は液晶層の厚みに大きく依存し,液晶層の厚みが減少するほど±π/2ツイストモードへの遷移速度が増すことが明らかとなった。また,液晶層の厚みが増加すると±πツイストモードへの遷移が優勢になり,ある厚み(約10 μm)において±π/2ツイストモードから±π/2ツイストモードへの遷移速度が0になる均衡点が存在することが見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では双安定性を有する液晶の配向特性について,以下のような考察課題を設定していた。すなわち,(1)紫外線硬化型液晶を用いた液晶層内部の配向状態の考察,(2)遷移時における過渡的な配向状態の考察である。上記の考察課題(1)に関しては,当初の予定通りミクロトームを用いたスライス試料の作製とその偏光顕微鏡観察を行い,ホモジニアス配向セルから作製した液晶フィルムの断面方向からの観察および液晶層内部の配向状態の考察を行うことができた。また,当初はマイクロパターン液晶セルにおいても同様に液晶フィルムを作製し断面方向から偏光顕微鏡観察を行う予定であったが,双安定性を発現するには液晶層を10μmの薄さに設定する必要があったため,ガラス基板から液晶層を剥離することが困難であり,マイクロパターン液晶セルについては切削試料の作製および評価に至らなかった。また,考察課題(2)に関しては,±πツイストモードおよび±π/2ツイストモードの2状態間の遷移速度を定量評価した。その結果,遷移速度が液晶層の厚みに大きく依存すること,遷移速度が0となる均衡点が存在することなど,応用上有益な知見が得られたことは評価に値する。以上の研究成果を総合的に判断して,おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
双安定マイクロパターン液晶セルを位相板および偏光板と組み合わせることによって,高いコントラスト比を有する液晶表示デバイスを実現することを目指す。具体的には,光強度のコントラスト比が最大となるように液晶セル,位相板および偏光板の光学パラメータや角度設定の最適化を行う。特に以下に注目して考察を行う。(1)液晶セルにおける液晶層の厚みおよび液晶の複屈折,(2)位相板のリタデーションおよび光学軸の角度,(3)偏光板(ポーラライザおよびアナライザ)の透過軸の角度。以上の考察結果を基に光強度のコントラスト比が最大となる条件を見出す。また,実際に双安定液晶デバイスの試作を行い,透過光強度に加えて色相のスイッチング特性についても性能を評価する。
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