本研究は、近年、新たな太陽電池の材料として着目されているCIS系半導体ナノ粒子において、励起ダイナミクスを解明することで、光電変換効率のさらなる向上にむけた指針を得ることを目指し、以下の3点について研究を行った。 (1)CIS系半導体ナノ粒子の作製条件の最適化と量子効率増大に向けた取り組み:水熱合成法によりZnxCu1-xInS 混晶ナノ粒子の作製を試み、約1.6eV~3.0eVの範囲で発光エネルギーを制御することに成功した。また、In/Cu比が発光量子効率に大きく影響を及ぼすことから、その最適条件の導出、および、ZnCuInS/ZnSのcore/shell型ナノ粒子を作製することで、無輻射再結合を抑制することができ、従来型よりも高い発光量子効率を有するナノ粒子の作製に成功した。 (2)CIS系半導体ナノ粒子の発光メカニズムの解明:水熱合成法により作製したCuInS2ナノ粒子が分散したフィルム試料を作製し、その発光ダイナミクス特性の温度依存性の測定結果より、その発光の起源はドナーアクセプターペアによる発光であることを明らかにした。またそれは、熱活性型の無輻射再結合過程を考慮することにより、発光強度/寿命の温度依存性を定量的に説明できた。 (3)光応答ダイナミクス計測のためのシステム構築:光応答ダイナミクス計測のためのシステム作りにおいては、光源の元となる超短パルスファイバレーザー、光アンプファイバ、Supercontinuum光発生のためのPhotonic Crystal Fiberの導入など、システム構築にむけての整備を行い、800nm~1300nmにわたるSupercontinuum光発生に至ったが、本予算で構築したシステムでは、CuInSナノ粒子中の多励起子生成にはレーザー強度が低いことが明らかとなり、システムのアップデートを今後行う必要性があるという結論に至った。
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