Oバンド(1.3μm帯)用の電気光学ポリマーの開発を中心に行った。電気光学定数r及び超分極率βは吸光係数と一般にトレードオフの関係にあり、Cバンド(1.5μm帯)用によい電気光学ポリマーはOバンドで吸光係数が高いため、Oバンドで適した電気光学ポリマーを開発する必要がある。性能指数をn3r/(αmaxλ)[10-6cm/dBV]で定義し、この値が大きくなるOバンド用の電気光学ポリマーを開発した。ここでnは屈折率、αmaxは対象波長帯での吸光係数の最大値、λは波長である。電気光学色素のアクセプター部位を改良することによって、Oバンドにおいて適した電気光学ポリマーを開発することに成功した。Tgが199℃のクロスリンク型の電気光学ポリマーでは引続き耐熱性テストを行い、105℃でも2000時間以上の長期安定性が確認された。本研究に関連して、電気光学ポリマーの耐光性についての研究及び更なる高周波での応用として電気光学ポリマーのTHz波発生や検出についての研究も進めた。 有機半導体への電荷注入による新規な屈折率変調に関する研究(使用波長域として近赤外光~可視光の波長域)では、有機半導体材料への電荷注入による屈折率変化に対する応答をMHz程度まで測定することが可能な透過型エリプソメトリー法の構築を行った。具体的には、ファンクションジェネレータにより生成したバイアス電圧を持つ矩形波をパワーアンプを通した後に試料に印加する。外部電極からの電荷注入によって生じたラジカルカチオン・アニオンの生成により、分子の電子状態が変わり、それに伴って巨視的には複素屈折率が変化する。その変化を、透過光の変化としてロックイン検出を行う測定系を構築した。透明電極のITOやIZOからの電荷注入が可能な有機半導体材料の選定を行ったが、デバイスを作製し、上述の開発した測定系を用いて動作確認を行うところまでは至らなかった。
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