研究課題/領域番号 |
16K04942
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 弘紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60321981)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁場中溶融凝固 / 磁気力 / その場観察 |
研究実績の概要 |
強磁場・高磁気力場下での溶融凝固過程をその場観察するための加熱・観察装置の設計と製作を進めた.加熱には透明ガラスヒーターを用いることで,ヒーター外部からの観察を可能とし,CCDカメラを3台用いることで,従来は横からの1方向のみの観察であったものを,横方向は直行する2方向とし,さらに下側からの観察も可能とする設計とした.ヒーターやCCDカメラ,温度計はそれぞれ単体で購入するため,これらを組み合わせる部品の設計を進めてきた.装置の中心となる部品の材質としては,非磁性金属であるステンレスやアルミの使用も考えられたが,今回はポリイミド樹脂を使用することで,強磁場中での装置の移動でも誘導電流によって装置に働く力を極力抑えることを優先した.素材の耐熱温度は300℃程度となるが,本研究を遂行する上では十分であると考えた. 装置製作で問題となったのは,ヒーター制御用の温度計の取り回しである.当初,熱電対の使用を予定していたが,ヒーターに組み込んで磁場中でテストしたところ,測温部の配置と導線の取り回し方によって,磁場による影響の出方が大きく異なることが分かった.導線の経路に温度勾配を持つような状態で配線した場合,装置をマグネットの中心,および上・下部の磁気力場最大位置に配置した場合では,一定温度を保持した状態で励磁した時の温度変化が,その大小や正負も含めて異なることが分かった.そのため,温度制御に熱電対以外の温度計を用いる必要があり,白金測温体などの使用を検討している.温度の読みに多少の磁場の影響があるとしても,測温部の磁場の強さのみ依存するのであれば,補正は比較的容易であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れているとした理由は,装置作製の面で,当初計画していた熱電対での温度計測ではマグネットボア内の位置によって磁場中での温度の読みが大きく異なったため,現象の再現性の確認と原因の究明に時間を要した.結果として,小型のヒーターを用いているため熱電対導線の経路に比較的大きな温度分布が生じてしまうこと,磁場最大位置や磁気力場最大位置など,ヒーターをマグネット内の異なる位置に設置すると導線経路の磁場分布が異なるため,温度分布による影響と合わせて熱起電力に複雑な影響が出ることが分かった.そのため,熱電対の使用を取り止め,白金測温体の使用を検討することにした.白金測温体においても,測温体の形状や材質,リード線の形状など様々であるため,300℃程度までの高温での使用に耐え,かつ磁場の影響を受けにくい材質・構造の素子の選定を行っており,装置改良の目処は付いてきた.
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今後の研究の推進方策 |
ヒーター温度の計測・制御を中心とした装置の改良を早急に実施し,磁場中での溶融凝固その場観察のテストを進めていく.装置を使用した材料作製の面では,磁場最大位置,磁気力場最大位置での凝固過程,成長過程の違いを捉えるのに適した材料,条件を選定し実験を行っていく.作製した材料の特性に差異が見られる場合,それが磁場や磁気力によるものなのか,その他の要因によるものなのか検討するとともに,磁場分布の異なるマグネットの使用やボア内の位置を変えなど,磁場と磁気力場の組合せ条件を変えることで要因の特定と特性発現の最適化を進める. また,平成28年度より共同利用に供された25T無冷媒超伝導マグネットで磁気浮上のテストを実施したところ,ポリスチレン(PS)やミニトマトなどの反磁性物質の浮上を確認している.この時はデモ的な実験であったが,無冷媒超伝導マグネットでは長時間の浮上実験が可能であるため,浮上状態での溶融凝固実験も視野に入れた基礎データの取得を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように,ヒーター温度の計測・制御の面において当初の計画通りに進まない部分が生じた.温度計測は装置の作製とデータの信頼性を得る上で非常に重要であるため,温度計の再検討とそれに伴う設計の変更が生じた.そのため,組み立て用部品製作の発注が遅れており,主にその分が次年度への繰り越しとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
装置作製に関わる分が主なので,設計が完了次第部品の製作を進めることで次年度の早い内に執行する予定である.
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