磁場などの外場を用いた材料プロセスは,材料の高品質化,高機能化が期待できることから様々な研究が行われている.中でも磁場は非侵襲で物質に作用し,分子や微結晶など構成要素の配向や配列が期待出来る.また,勾配磁場下で働く磁気力を重力と平行,反平行に作用させることで擬似的な微小重力環境や過重力環境を実現でき,強磁場・高磁気力場は新しい材料プロセスの場として期待されている.材料プロセスを効率的に実施するためには,プロセスのどの段階で何が起こっているかを知ることが重要であり,その場観察は極めて重要な手法である.そこで本研究においては,強磁場・高磁気力場下での溶融凝固過程,結晶成長過程のその場観察可能な装置を開発し,直行する水平2方向と下方からとの3方向からの同時観察を可能にした.この装置と無冷媒超伝導マグネットを組み合わせて,これまで最大19テスラまでの強磁場中での溶融凝固過程の観察を実施した. 本年度については,試料として主に尿素を用い,試料をマグネットの中心に配置した磁場のみが作用する環境,中心より上側に配置した上向き磁気力による微小重力環境及び下側に配置した過重力環境で溶融凝固実験を行った.どの条件の凝固過程においても,過冷却状態から瞬時に凝固するのが観察された.さらに凝固後試料において,容器底部で凝固した試料の上部に針状結晶ができている場合があり,その有無と位置は磁気力の大きさによって変化した.即ち,上向き磁気力が大きいほど針状結晶が容器の下部で成長し,ゼロ磁場や磁場のみ,下向き磁気力の場合では針状結晶が見られなかった.尿素は反磁性であるから,上向き磁気力が大きいほど下方で成長するのは直感的には逆の振る舞いである.この原因の解明には未だいたっておらず,今後も条件を変えた実験を継続する予定である.
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