研究課題/領域番号 |
16K04943
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
櫻井 岳暁 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00344870)
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研究分担者 |
沓掛 健太朗 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00463795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 粒界物性 |
研究実績の概要 |
有機多結晶薄膜の粒界配向を見るため、蛍光マッピング観測と偏光STXM観測に取り組んだ。試料は有機薄膜太陽電池に用いられるルブレンと、サブフタロシアニンをガラス上に形成しアニールした試料を用いた。まず、ルブレン試料については300μm大の粒径が観測され、粒内では均一な方向に分子配向が確認された。この、粒界部分を顕微STXMにより観測した結果、20 nmの分解能で見ても粒内と異なる配向は見えず、均一な方向に揃っていた。一方、サブフタロシアニン結晶薄膜については、ある一点から放射状に結晶粒が広がる球状結晶(粒径μメータ大)を取り、蛍光もその結晶構造に応じて放射状に拡がりをもつことが見えた。この結晶粒の内部配向をSTXMにより確認したところ、中にはアンテナ状にひろがる一次元鎖(幅が<100 nmで長さがμメータ大)が形成されていて、ある結晶核から360°放射状に伸びて拡がるサブフタロシアニンの結晶繊維を確認した。以上の違いは、ヘリングボーン構造により二次元状に結晶成長しやすいルブレンと、π軌道のスタッキング方向のみ強い相互作用を生むサブフタロシアニンの構造物性の違いに帰属されると考えられた。一方、サブフタロシアニンの結晶構造は対称性が低く、その対称性ゆえ放射状に広がる結晶繊維が形成されたものと考えた。 現在、粒界のとりやすい結晶配向と結晶構造の相関については東北大学にて検討が進められている。また、温度依存性の測定可能な傾向顕微鏡マッピング装置を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機結晶について、粒内と粒界で大きく構造変調が起こっていないことが明らかになりつつある。この結果は、無機多結晶系薄膜と同様であり、粒界物性が粒界配向による違いにより現れることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
既報のフタロシアニンでは粒界と粒内での配向の違いが見られている(Z.Pan et al., Nat.Mat. 2015)。この報告と我々の試料の違いは、成膜法の違いにあると予想している。よって、塗布形成と蒸着法による違いについても検討したい。また、粒界物性を調べるため、顕微蛍光分光マッピングの温度依存性を取り、粒界での再結合過程についても研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたマイクロ波発振装置を別途入手し、一方顕微光学装置のミラー系で出費が発生し、結果的に当初計画と支出が変更になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
顕微実験の光学検出装置に活用予定である。
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