(1) ルブレン半導体多結晶薄膜はアニール温度の違いによりplatelet構造(140℃)からspherullite構造(170℃)へと変化する。この違いによる粒界構造の違いを偏光軟X線顕微鏡により観察した。pythonプログラムコードを作成し画像解析を行った結果、platelet構造では粒界構造が直線的で構造の乱れがほぼないのに対し、spherullite構造では、粒界のRMS値が3.5倍増え、かつ局所分子配向が粒界近傍数百ナノメータで大きく乱れる様子が確認された。なお、このspherullite構造は、粒内で繊維状の構造体が並んだ構造をしており、アニール温度の上昇により急速に結晶成長の異方性が現れ、このような構造をとることが明らかになった。さらにその繊維状の結晶体が隣接する粒と会合する際、境界付近で構造の乱れが発現したと結論づけられた。なお、有機半導体薄膜内部での分子配向の乱れはHOMOならびにLUMO準位のブロード化、すなわちギャップ内準位の形成と対応していることが知られている。粒界での構造の乱れがエネルギー障壁を形成し、粒界散乱により気伝導特性を劣化させている(plateletでは3 cm2/Vsなのに対し、Spherulliteでは0.8 cm2/Vs)と推測される。以上のように偏光軟X線顕微鏡を用いた粒界構造の定量評価法を確立した。 (2) 粒界の電気・光学特性を調べるべく、顕微PL法を利用したOptically Detected Magnetic Resonance (ODMR)測定系を立ち上げた。ダイヤモンドを用いた計測で、NVセンターの検出に成功し、現在有機薄膜粒界物性の評価を開始している。
|