研究課題
本研究ではGaCl3を用いた新しいGaN気相成長法により、1300℃を超える高温で3mm/h以上の超高速成長を実現し、低コストGaN製造法の確立及びGaN結晶性と成長温度との関係を解明することを目的としている。平成28年度は、GaN膜の高温高速成長を実現すべく、理論計算と実験とを併用し最適な原料部構造の設計および成長実験を実施した。従来の原料部構造では金属ガリウムと塩素との反応が不十分であり、一塩化ガリウムの生成濃度が安定せず未反応の塩素が通り抜けてしまうことが熱流体解析により明らかとなった。この状態では二段階め反応部においてGaCl(g)+Cl2(g)=GaCl3(g)の反応が安定せず結果としてGaNの成長速度が劇的に下がってしまう。そのため、金属ガリウムと塩素との接触面積および接触時間を増加する原料部構造を考案・設計し成長実験を行った。新原料部構造を用いて三塩化ガリウム高濃度供給下で成長実験を実施し1300℃という高温において300μm/hを超える成長速度を達成した。基板結晶(GaN自立基板)を1300℃まで昇温する際に基板表面が熱分解により劣化が生じることにより、その上に成長した結晶の品質は未だ不十分であるが、基板劣化に対する対策を実施することで結晶性の向上やさらなる成長温度の高温化も可能であることが見出された。気相法を用いたGaN結晶成長において1300℃を超える成長温度は全く例がなく、得られた結晶の不純物取り込みやその他光物性等は非常に興味深く、平成29年度以降に詳細に解析を行う。これらの成果をもとに原料濃度の増加により超高速成長を目指す。
2: おおむね順調に進展している
原料の高濃度供給を可能とする原料部構造の設計・最適化が終了し、計画通りに安定した高速結晶成長ができるようになった。また、成長温度上限の把握のため、高原料濃度供給により1300℃において300μm/hを超える成長速度が得られたことは、さらなる高温成長も可能であることを示唆する。成長速度と成長温度は強い相関があり、高温ほど成長速度は下がる傾向にあるが、原料供給量を増加することでさらに成長の駆動力を増加し、成長可能温度域の拡張を今後実施する予定である。
平成28年度の成果を発展し、1300℃を超える高温での超高速成長(目標: 3mm/h以上)を達成するための成長条件探索およびGaN結晶の線欠陥、点欠陥(不純物含む)の解析、2インチ径種結晶(サファイアor GaN基板)上へのバルクGaN結晶成長及び評価を当初の予定通り実施する。また、平成28年度の研究で新たに明らかとなった、昇温中の初期基板表面の劣化を抑制するため、多段階GaN成長や表面保護層(例えば、超薄膜AlN膜を堆積する等)の検討を実施する。さらなる高濃度化の際には、平成28年度に得られた知見のとおり金属ガリウムと塩素の気液反応の制御が非常に重要であることから、理論計算を併用して実験条件の設定を行っていく予定である。
当該年度において、固体原料を用いたトリハライド気相成長GaNにも取り組むことで、三塩化ガリウムのGaN表面吸着挙動を明らかにする予定であったが、通常の金属ガリウムと塩素ガスを用いる成長法でこれまで報告のない成長温度でのGaN成長を達成したため、そちらの研究に注力した。そのため、固体原料トリハライド気相成長装置の改造に伴う費用が未執行の状態である。
次年度(平成29年度)に固体原料トリハライド気相成長装置の整備を実施し、予算執行する予定である。具体的にはバルブ類、原料容器等の費用へ充当する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
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