研究課題/領域番号 |
16K04945
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村上 尚 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401455)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 窒化ガリウム / トリハライド気相成長法 / 気相成長 / 基板 / 化合物半導体 |
研究実績の概要 |
本研究ではGaCl3を用いた新しいGaN気相成長法により、1300℃を超える高温で3mm/h以上の超高速成長を実現し、低コストGaN製造法の確立及びGaN結晶性と成長温度との関係を解明することを目的としている。平成28年度には結晶品質は劣るものの、300μm/hを超える成長速度を実現し、新規成長手法であるトリハライド気相成長法のポテンシャルの高さを実証した。平成29年度は結晶品質の向上に注力し、一般にトレードオフの関係となる成長速度と結晶品質を成長温度の増加により両立できることの原理検証を実施した。その結果、使用する成長温度により、基板結晶(本研究ではGaN(000-1)自立基板)の結晶品質を維持して成長できる成長速度の上限が存在し、より高温成長(1350℃以上)において品質を維持したまま高速(300μm/h以上)で結晶成長できることが明らかとなった。成長結晶の物性評価も進められ、基板結晶よりも高品質化している部分も一部確認された。一方で、成長温度の高温化により、基板結晶裏面(GaN(0001)面)の劣化が顕著となり、その対策が必要であることも明らかとなった。平成29年度に明らかとなった知見から、原理的には成長温度をさらに高温化することで目標とする3mm/hの成長速度が可能であることは見出されたが、高温化のための種結晶基板の劣化対策、あるいは初期基板に熱耐性の高いものを用いる等の対応が必要であり、平成30年度に引き続き高速、超厚膜成長を目指し研究を推進する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究により、成長温度の高温化により成長速度の上限値を拡大することが可能であることを明らかにし、目標とする3mm/hの成長速度が原理的に可能であることが示された。初期基板(種結晶)の熱劣化対策を講じる必要はあるが、従来法では100~150μm/h程度が成長速度上限である現状から、新規成長手法であるトリハライド気相成長法により結晶品質の劣化なく300μm/hを超える成長速度で実施可能であることを明らかにしたことは、産業的にも大きなインパクトを与えるものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度には当初の計画通り、①1300℃を超える高温での超高速成長(目標: 3mm/h以上)を達成するための成長条件探索、②GaN結晶の線欠陥、点欠陥(不純物含む)の解析、③2インチ径種結晶(サファイアor GaN基板)上へのバルクGaN結晶成長及び評価を行う。特に、1300℃を超える成長温度にて気相成長したGaN結晶は、これまで世の中に存在しないことから、その物性は非常に興味が持たれ、特に欠陥の消滅や不純物取り込みにどのような影響があるかについて詳細に物性評価を実施する予定である。また、さらなる高速成長のため原料の高濃度化が必須であることから、平成28~29年度に得られた知見のとおり金属ガリウムと塩素の気液反応の制御のため、理論計算を併用して実験条件の設定を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施予定であった、転位(欠陥)評価のためのTEM分析の代わりに研究室現有のカソードルミネッセンスを実施し、転位の減少挙動について把握できたため、詳細な分析は平成30年度に実施することとした。そのため、TEM分析費用(1回分、外注)を次年度に執行することとした。
|