研究課題/領域番号 |
16K04947
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
太子 敏則 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (90397307)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素 / 溶液成長 / 溶剤金属 / セラミック原料 / 新規成長方法 |
研究実績の概要 |
次世代パワーデバイス材料として期待される炭化ケイ素(SiC)について、従来の溶液法とは異なり、Siを含まない金属溶液にSiCセラミックを溶解させ、SiおよびCが連続的に溶け出した溶融金属からの結晶育成を行う。充填したセラミック分のSiC単結晶を溶剤金属を通じて再結晶により得ることで、従来のSiC溶液成長の壁を打破し、結晶の大型化、長尺化に挑む。3年の研究期間で溶融金属とSiおよびCの溶解度と溶解速度、4H-SiC結晶成長の安定性、再現性の観点から、この結晶育成に適した金属溶剤および成長条件の最適化を、信州大学既存の設備で検討する。 平成28年度は、溶剤金属(Cr、Ni、Feなど)へのSiCの溶解度、溶解速度の検討およびSiC結晶育成の環境整備を行い、SiCセラミックとカーボンるつぼの溶解選択性の評価と溶剤金属(Cr、Ni、Fe)からのSiC結晶育成を検討した。 まず、溶剤金属をFeとした場合、SiCセラミックが溶解されず、カーボンるつぼの溶解が支配的であることがわかった。同時に、SiCセラミックおよび種結晶上で固化したFeからはSiCが検出されず、本研究の溶剤としては不適当であると結論した。 次に溶剤金属をNiとした場合、SiCセラミックの溶解は確認できたが、種結晶上で固化したNiからはSiC結晶が検出されず、グラファイトおよびNi-Si化合物が検出された。よって、Niも溶剤としては不適当であると判断した。 溶剤金属としてCrを用いた場合、セラミック上に固化したCrからSiC結晶が確認できた。また、SiC種結晶直下にSiC結晶が成長することも確認された。液温を上げることでSiCの結晶成長速度が下がる傾向が見られた。それでも現時点では、Crを溶剤金属として用いることにより、目的の結晶育成が実現できる可能性が高いと判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
低融点金属であるFeとNiが、本研究の溶剤候補とならないことを早い段階で見切ることができ、その代わりとして平成29年度に検討を予定していたCrを溶剤金属として実験を前倒しして行うことができた。その結果、Crで現段階で最も優れた結晶成長を実現できており、研究発表も多く行っていることにより、上記区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、H28年度で実績のあったCrを溶剤金属として、これを中心としたSiC溶液成長を実施する。まずは、炉内を観察できない状況での結晶育成環境の整備、最適化を行い、Cr溶媒の量(液面高さ)や温度を変化させてSiC結晶育成を行う。 一方で、Cr溶媒以外の溶剤金属(Ti、Crと別の金属の混合溶媒等)の検討も行い、引き続き、カーボンよりもSiCセラミックスを優先的に溶解する溶媒、かつ4H-SiCの形成エネルギーが低く、安定に4H-SiC結晶が得られるような条件を模索する。 結晶のサイズは、1年目で実現ができなかった、直径20mm、長さ10mmのSiC結晶を成長することを目標とする。
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