研究課題/領域番号 |
16K04948
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森吉 千佳子 広島大学, 理学研究科, 准教授 (00325143)
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研究分担者 |
和田 智志 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60240545)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 誘電特性-結晶構造同時測定 / 放射光回折 / 圧電セラミックス |
研究実績の概要 |
機械的エネルギーと電気的エネルギーを変換できる圧電体は,我々の生活に広く応用されている。より高効率の圧電素子の開発には,圧電定数が大きく実用温度範囲が広い(強誘電相転移温度TCが高い)圧電体材料の開発が不可欠である。圧電性を特徴づける電気的な測定量である圧電定数や誘電率は温度により変化する。一般の強誘電体ではこれらの量はTCでピークをもち同時に結晶構造の対称性が変化するが,リラクサーのような物質ではピークを示す温度とTCは一致しないことが知られている。従来,電気的な測定量と結晶構造の情報は別々に測定されている。このような方法は必ずしも効率的ではないだけでなく,電気的特性と結晶構造との対応を一対一で明らかにする方法とは言いがたい。また,実際に電場が印加されマクロに材料が変形している状態の結晶構造もほとんど理解されていないことから,圧電性のミクロな発現機構もほとんどわかっていないのが現状である。 本研究では,圧電性の発現機構を理解し,より高効率の圧電材料を推進するため,誘電率と結晶構造の温度変化を同時測定するための放射光粉末回折実験の方法を検討している。2017年度には以下のような研究を行った。 1)圧電材料の開発:チタン酸バリウムをベースとした固溶体圧電材料を開発した。放射光回折実験により温度-濃度相図の決定と結晶構造解析を行った。 2)放射光同時測定を想定した誘電測定:LCRメータおよびインピーダンスアナライザを用いた誘電測定系を整備し,オフラインで測定可能なセットアップを準備した。 3)誘電率同時測定を想定した放射光実験;結晶構造-電気特性の同時測定を想定し,電極が取り付けられた厚み0.5mm程度の平板試料や,基板上に成膜された圧膜の実験方法と温度変化の方法を検討し,温度以外のパラメータを変化する方法についても検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘電測定については,オフラインで測定可能なセットアップを準備した。チタン酸バリウムをベースとした固溶体圧電材料の開発を行い,放射光回折実験により温度-濃度相図の決定と結晶構造解析を行った。放射光実験については,結晶構造-電気特性の同時測定を想定し,電極が取り付けられた厚み0.5mm程度の平板試料や,基板上に成膜された圧膜の実験方法と温度変化の方法を検討した。さらに,放射光回折装置や周辺装置のアップグレードと整備を行った。全体としてはおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度(最終年度)は以下の2点について研究を行う。 1)セラミックスの実材料を用いて,直流電場印加下の結晶構造決定を行うための放射光実験を行う。 2)放射光回折用の電気炉を用いて試料の温度を変化しながら,誘電率測定と回折実験を同時に行う。 放射光実験については2018年度中のSPring-8 BL02B2のビームタイムを十分確保済みである。
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