研究実績の概要 |
K2O-Nb2O5系の強誘電体は、ニオブ酸カリウム(KNbO3:以下KN)だけが知られている。このKNは、弾性波素子そして非鉛系圧電材料としても有望であり、この系の材料開発は注目されている。KN相以外のK2O-Nb2O5系の強誘電体相には、KN以外に申請者が見出したK5Nb9O25相が存在するが、相図にも記載が無い。 初めてこの相を報告したP. Becker はフラックス法で結晶を作製し、またK2O-Nb2O5系からはこの相は出来ないことを報告した。一方、申請者は、Beckerらとは別のフラックス法で結晶を育成し、誘電率測定から強誘電体であることを見出した(R. Komatsuら, Jpn.J.A.P., 42 (2003) 6106-6109.) 非鉛系圧電材料として重要なK2O-Nb2O5系材料で新しい強誘電体材料K5Nb9O25は特性上注目されるので、本研究では相関係の解明、結晶育成、物性測定を目的としている。K5Nb9O25相周辺の相関系の調査では、周辺組成のセラミックスを作製し、DTA-TG, X線回折等から相図を再検討し、従来報告されている相図とは異なる相関係になることが判明した。それによると一致溶融組成の可能性が高く、また固溶体も存在することも推定された。高温DSC(示差走査熱量測定)での昇温冷却実験でも一致溶融化合物であるデータも得られたので、従来の結果とは異なり一致溶融化合物である可能性が高い。詳細な検討を継続している。結晶育成については、相図検討の結果から一致溶融化合物に可能性が高いので、融液からの徐冷により結晶育成を検討している。その結果単相の結晶が得られた。今後はその場観察法での結晶実験を行い、より大型化のための育成条件を見出していくことを考えている。
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