研究課題/領域番号 |
16K04950
|
研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
末岡 浩治 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (30364095)
|
研究分担者 |
山本 秀和 千葉工業大学, 工学部, 教授 (00581141)
中塚 理 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20334998)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | 第一原理計算 / 原子配置 / シリコン単結晶 / IV族半導体 / 太陽電池 / パワーデバイス用シリコン |
研究実績の概要 |
本研究の全体的な構想は,ダイヤモンド構造を有する結晶において実現する原子配置と材料物性値を計算により求める手法を開発し,この計算手法を適用することにより,現代の電子デバイスの主流材料であるSi結晶を中心とするIV族半導体の高品位化に貢献することである. 平成29年度は,平成28年度に作成した「置換位置と格子間位置の両方を考慮した,独立な原子配置と各配置における等価な配置数を算出するプログラム」を用い,(1)CZ-Si結晶成長と(2)太陽電池用のIV族混晶系半導体を研究対象とした.(1)においては,格子間Si原子(I)と原子空孔(V)の対消滅機構の解明を,(2)においては,Si薄膜やGe薄膜中でCやSnが置換位置を占める割合を予測したり,実験と比較しうるバンドギャップの期待値を得ることを目的とした.得られた主要な結果は以下の通りである. (1) Si結晶成長中の点欠陥挙動について,IとVの距離が約0.5 nmまで接近すると対消滅が起こり,その際のエネルギー障壁はほぼ0である.また,物理的に可能な対消滅の経路を同定できた. (2) 太陽電池用IV族混晶系半導体中の原子配置について,CとSn原子はSiやGe薄膜最表面で非常に安定であり,表面の存在は5層目より内部のCとSn原子の安定性に影響しない.また,CやSnの単独添加と比較して,C:Sn = 1:1の組成で同時添加した場合には,これらの形成エネルギーは低下,すなわち導入が促進される.さらに,Si結晶にCを%オーダーで添加すると,バンドギャップは低下する. 本研究成果に関し数件の論文発表を行うとともに,応用物理学会において招待講演を行った.さらに,日本学術振興会第145委員会から講演依頼(平成30年7月13日)を受けるとともに,米国電気化学会から招待講演(平成30年10月第1週)を受けている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,平成28年度に作成した「置換位置と格子間位置の両方を考慮した,独立な原子配置と各配置における等価な配置数を算出するプログラム」を用い,(1)CZ-Si結晶成長と(2)太陽電池用のIV族混晶系半導体を研究対象とした.(1)においては,格子間Si原子(I)と原子空孔(V)の対消滅機構の解明を,(2)においては,Si薄膜やGe薄膜中でCやSnが置換位置を占める割合を予測したり,実験と比較しうるバンドギャップの期待値を得ることを目的とした. 本プログラムを用いることで,研究対象とする計算モデルにおいて実現可能な原子配置をすべて見出すことが可能となっている.さらに,上記した半導体に関する課題(1),(2)に本プログラムを適用し,得られた結果について数件の論文発表を行うとともに,応用物理学会において招待講演を行った.また,日本学術振興会第145委員会から講演依頼(平成30年7月13日)を受けるとともに,米国電気化学会から招待講演(平成30年10月第一週)を受ける成果を挙げている.このように,本研究はおおむね順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度はSi結晶成長の研究と並行して,パワーデバイス用Si結晶中のキャリア・ライフタイム制御欠陥も研究対象とする.リン(P)ドープn型Si結晶のライフタイム制御を目的として電子線照射により意図的に導入したV-V(原子空孔対)やV-P(空孔リン対)のような深い準位の欠陥を想定している.これらの欠陥の形成過程や,格子間Oや格子間Cとの相互作用により,これらの欠陥が構造変化する機構の解明を目的とする. さらに平成30年度から,パワーデバイス用Siに続き,パワーデバイス用4H-SiCとGaNにおける不純物や点欠陥制御も視野に入れ,六方晶構造についても計算可能なプログラムの開発についての準備も始める.SiCとGaN結晶については化合物半導体であることに伴いドーパント種や点欠陥種が多い.そのため,制御が必要になる原子レベルの欠陥も多く,たとえばSiCではライフタイムを低下させるC空孔などの点欠陥(Si空孔,C空孔,格子間Si,格子間C)の物性やドーパント(N,P,Al,Bなど)の活性化,さらにこれらの複合体形成などが研究対象となる.Siと比較してSiCとGaNでは原子レベルの欠陥についての理解や制御が遅れていることから,本研究で提案する計算手法の適用がSiCとGaNの高品位化にも役立つと確信している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際会議(GADEST2017)での発表を計画していたが,開催地(ジョージア)の情勢不安と学内業務のため参加を取りやめた.その経費の一部は共同研究者との打合せ等に使用したが,残額は次年度に繰り越した. 平成29年度のこの残額217,992円は,平成30年度の国際会議(2件)における成果発表のための旅費として使用する.
|