研究課題/領域番号 |
16K04952
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長島 和茂 明治大学, 理工学部, 専任教授 (70339571)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | THFハイドレート / 海底メタンハイドレート / 多孔質媒体 / 結晶成長 / 形態形成 |
研究実績の概要 |
海底メタンハイドレートは海底堆積物中に多様な形状で存在することが知られているが、それらの形状の形成機構はよく分かっていない。研究代表者は、多孔質媒体としてのガラスビーズとTHF水溶液を混合したサンプル中においてTHFハイドレートを成長させるというモデル実験を行い、すべての形状の再現に既に成功している。本研究では、このモデル系の問題点を克服し海底メタンハイドレートの形成の素過程により近づけるために、ゲスト分子の拡散律速の効果を顕在化させた実験を行い、ハイドレート形状やサイズに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 多層のハイドレートが配列した構造が生成する条件において、THF濃度と含水比、成長速度を変数とした一方向凝固実験を行った。この結果、ハイドレートが生成しづらい条件である低THF濃度の方が、ハイドレート層の幅と間隔は大きくなること、そしてさらに濃度を下げる(条件を厳しくする)と粒状のハイドレートが現れるという新奇な結果を示した。このことは、低濃度条件のためにハイドレートの成長速度が遅くなることで、結果として脱水圧密距離(ビーズ中の溶液を吸収する距離)は大きくなり、より幅の大きなハイドレートが形成するとともに、低含水比領域の幅も大きいために層間隔が増大するものと考察した。 低含水比における実験も行ったが、その結果は、臨界含水比(層構造を形成できない条件)は本実験の条件内ではほとんど差が生じないことが分かった。また、ハイドレートが成長中のその場観察画像と低温保持後画像の比較により、低THF濃度の場合には、分散状領域に未結晶化領域が存在することを示した。さらには、ガラスビーズサイズを変数とした実験も行い低THF濃度のサンプルではファセット状の形成が顕著となるという新奇な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
層構造が形成する条件において低THF濃度溶液を用いた実験により、ゲスト分子の拡散律速が層構造の幅や間隔に及ぼす影響が明らかとなり、その形成モデルを提案するという当初の目的をほぼ達成した。また、粒状や塊状ハイドレートが形成する条件を先取りして実施して、ファセット状成長という新奇な結果が得られている。 本研究予算で購入したデジタルマイクロスコープにより、高解像度での結晶画像の撮影が可能となり、低濃度条件下において生成するコントラストの低い結晶の解析が可能となったことが進展の理由である。 以上により、本研究はおおむね順調に推移しており、特筆すべき問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して、低濃度THF水溶液とガラスビーズを混合したサンプル中でのハイドレート成長実験を行うことで、ゲスト分子の拡散律速下における粒状や塊状ハイドレートの形状やサイズスケールに及ぼす影響を明らかにする。このとき、形のダイアグラム(ガラスビーズのサイズ分布と成長速度を変数とした形状の分類)中の境界線がどちらにシフトするかが一つのポイントであり、ハイドレート結晶の面積や数密度と成長速度の関係性への影響の見極めも重要と考えている。条件により、結晶形状やサイズ等が異なることなることの中には、形態形成の機構を理解する手掛かりがあるからである。 さらには、含水比が低い条件下での実験も併せて行うことで、そもそもがハイドレートが成長中に結晶近傍のガラスビーズを排除圧密するという凍上現象に類似の機構が、低THF濃度においてどのような影響を受けるかを明確にする。 このように本研究は、多孔質媒体中でのハイドレート結晶の形成過程におけるゲスト分子拡散およびガラスビーズ中での溶液輸送という2重の律速性の影響のもとにモデル実験を行うことで、海底メタンハイドレートの形態形成における重要な素過程を議論することで、多様なハイドレート形態の形成モデルを構築する。そして、本来は実験的には再現しようがない緩やかなメタンハイドレートの形成という地質学的な時間スケールにおける現象の理解への足掛かりとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入が予想よりも少なく済んだためである。具体的に消耗品は、実験セルを自作するために必要な、特注ガラス基板、カルレッツ(耐薬品性ゴムシート)およびガラスビーズや、超純水製造装置用のフィルター等の消耗品、実験装置本体の部品であるペルチェ素子等である。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に必要な消耗品の購入に使用する。
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