研究実績の概要 |
本研究ではCOの吸着を利用してPdAu合金表面における水素の吸放出サイトを明らかにすることを目的とする.Pd70Au30(110)表面においてCOが水素の吸放出サイトをブロックすることを利用し,そのCOの吸着サイトを反射型赤外吸収分光法を用いて調べることにより水素の吸放出サイトのミクロな構造を明らかにする.また昇温脱離スペクトルのシミュレーションを行い,COによる吸放出サイトのブロックのメカニズムを解明する. 本年度は現有の超高真空装置を赤外吸収分光装置と組み合わせ,超高真空中での加熱により表面構造を制御したPd70Au30(110)表面に吸着させたCOの反射型赤外吸収スペクトルを測定した.COの吸着量が低い場合は2069-2071 cm-1にCO伸縮振動のピークが現れるが,飽和吸着量ではそのピークは消失し,代わりに2110-2121 cm-1と1953-1973 cm-1にピークが現れた.一方,COを飽和吸着させた後に260 Kで加熱すると2077-2087 cm-1にピークが現れ,2110-2121, 1953-1973 cm-1のピークは消失した.360 Kで加熱すると2077-2087 cm-1のピーク強度は減少し,1975, 1936, 1902 cm-1に新たなピークが現れた.また表面Au濃度を増加させた場合,2110-2121 cm-1のピーク強度のみが増加することを明らかにした.これらの結果を過去の研究と比較し,2110-2121, 2069-2087, 1953-1973 cm-1のピークをそれぞれAuオントップ,Pdオントップ,Pd-Auブリッジサイト,1936, 1902 cm-1のピークを表面再構成に伴って現れるPd-Pdブリッジサイトに吸着したCOに帰属した.
|