本研究の目的である、表面上の単一の一酸化炭素分子の振動エネルギーに対する金属探針のつくる力場中の影響を、原子間力顕微鏡と走査型トンネル顕微鏡を用いて調べた。実験は、ドイツRegensburg大のFranz Giessibl教授のもとで行った。分子の振動エネルギーは、探針からの力による場の変化から影響を受けるだけでなく、分子のボンドの伸長や、分子の結合が弱くなることを考慮に入れる必要があることを見出した。以上の結果を論文としてまとめ、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)において発表した。研究成果はプレスリリースを行い周知し、北國新聞に取り上げられた。また、フィンランドで行われた第21回原子間力顕微鏡国際学会、第26回走査型プローブ顕微鏡コロキウム、スペインDonostia International Physics Center(DIPC)におけるセミナー、ドイツRegensburg 大学におけるセミナー、ドイツFritz Haber instituteにおけるセミナー等において上記の成果に関する報告を行った。 PNASで報告した実験を行った段階では、探針分子間の距離が短い領域では、原子間力顕微鏡における力センサーに不安定な挙動があらわれ、力とトンネル電流の同時計測が困難であった。これを力センサーの構造を改良することで克服し、発展研究を行った。スペインDIPCの理論家Thomas Frederiksen教授、スウェーデンLinnaeus大学の理論家Magnus Paulsson准教授との共同研究により実験結果の解釈を行った。現在論文としてまとめている。
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