研究実績の概要 |
最終年度では二元結晶であるInP(111)A-(1×1)表面の原子構造について第一原理計算による最適安定構造の導出と共にRHEEDロッキング曲線の動力学的解析を行い、表面構造を明らかにした。ただし、この表面は高温加熱が困難であるため、Arイオンスパッタリングと200℃程度の低温アニールにより清浄化を施した。解析の結果、最表面のIn層に欠陥が30%程度ランダムに存在し、その欠陥に誘発されて表面二重層が理想値の0.85Åから0,1Åまで圧縮緩和され、一枚のシート状に近い形状になっていることがわかった。[11-2]入射方位でBRAES測定を行うとInとPそれぞれのBRAESプロファイルの強度異常は類似していることがわかった。同じ二元結晶でもZnO(0001)表面からのZnとOのBRAESプロファイルには異なる強度異常が現れることを得ている。この相違点について波動場計算を行ったところ、InP(111)A-(1×1)では、表面のIn原子列とP原子列が極めて接近しているため両原子列上の波動場の振舞いはほぼ等しく、一方、ZnO(0001)においてZn原子列とO原子列では波動場の振舞いは互いに異なることがわかり、オージェ励起と波動場との相関性を支持する結果を得た。 また、層状結晶であるグラファイト(HOPG)を用いたBRAES測定も行った。特別に超高真空下で劈開する機構を用いて清浄表面を作成したが、RHEEDやLEEDパターンから面内回転した分域からなるモザイク表面であることがわかった。そこではワンビーム条件が適用でき、ロッキング曲線の解析により表面垂直方向の構造緩和はほとんどないことがわかった。波動場計算からブラッグ条件近傍での波動場の特徴的振舞いを明らかにし、それに相関するようなBRAESプロファイルの強度異常を見出した。
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